ヒラリーがトランプに敗れた真の理由 キリスト教が生んだ「熱病」とは?

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 大方の予想を裏切り、米大統領選でドナルド・トランプに完敗したヒラリー・クリントン。

 なぜヒラリーは嫌われ、トランプは支持されたのか――予想を外した専門家たちが、名誉挽回とばかりに分析を始めたが、「既成政治批判」や「製造業の白人労働者の不満」など、いずれも同工異曲。いまいち決定打に欠ける感が否めない。

 そんな中で注目を浴びているのが、昨年2月に『反知性主義:アメリカが生んだ「熱病」の正体』(新潮社)を刊行した森本あんり・国際基督教大学(ICU)副学長だ。トランプ当選直後から、マスコミ各社の取材依頼が押し寄せているという。

 以下、森本教授に話を聞いた。

「トランプ人気の背景には、アメリカ特有の知的伝統である〈反知性主義〉があります。よく誤解されてしまうのですが、〈反知性主義=バカ〉ではありません。〈反知性主義〉とは、知性そのものへの反対ではなく、知性が権力と癒着して人々の生活に余計な口出しをすることへの反対です」

「〈反知性主義〉の原点はキリスト教にあります。イエス・キリストは、当時のユダヤ社会で特権階級化していた〈学者・パリサイ人〉を厳しく批判し、貧乏だろうが無学だろうが神の前ではみな平等であると主張しました。キリスト教の影響力が非常に強いアメリカでは、この宗教的な平等観が、ヒラリー・クリントンのような既成のエスタブリッシュメント批判に結びつきやすい」

「もちろんトランプ自身の言動は、キリスト教の道徳とはかけ離れています。しかし、アメリカのキリスト教徒は、〈この世で成功しているということは、神がその人を祝福している証拠〉と考える傾向が強い。つまり、神も億万長者トランプを是認しているのだろうと考え、道徳的逸脱についても大目に見てしまうのです」

 日本人にはなかなか理解しがたい論理だが、トランプ大統領誕生の深層を把握するためには、アメリカ特有のキリスト教の伝統についても知識を深める必要がありそうだ。

デイリー新潮編集部

2016年11月11日掲載

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