金谷ホテルが東武鉄道の子会社に 風評被害で客足減

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 問題。アインシュタイン、ヘレン・ケラー、チャップリン。この偉人たちに共通することは何か。正解は、

「3人とも日光金谷ホテルに宿泊したことがある」

 創業140年を超えるこの名門ホテルが東武鉄道の子会社になることになった。

 経済部記者の話。

「もともと東武も金谷の株主のひとつではありましたが、保有比率は1%程度。ところが先月30日に、大量の株を保有する投資事業有限責任組合、従業員持株会と譲渡契約を結び、9月末には6割以上を保有する筆頭株主になる予定です」

 金谷ホテルは以前、経営危機に瀕していた。

「92年に『中禅寺金谷ホテル』を新築した際の借金が膨らみ、債務超過に陥りました。05年にメーンバンクの足利銀行は債権を放棄。地元の企業などから出資を受け、経営再建に取り組み、最初は順調に進んでいたのですが……」(同)

 その最中の11年、東日本大震災が発生。原発事故の影響で日光市の放射線量も高い状態が続き、客足が遠のいた。

 旅行誌記者が後を受ける。

「現在は日光へのマイナスイメージはだいぶ薄らいだとはいえ、原発事故の影響で中禅寺湖のニジマスはいまだに持ち出しが禁じられている状態です。特に情報が乏しい海外からの旅行客の戻りは厳しく、ホテルの経営は芳しくない」

 客足減の要因は、“風評被害”だけでなく、ホテル自体にもある。

 ホテル評論家の瀧澤信秋氏の解説。

「大半の客がホテルに求めるのは、クラシカルな雰囲気よりも滞在中の快適さです。かつて私も宿泊したことがありますが、金谷は建物の老朽化が進み、館内に古い水道管が発する臭いがし、空調の効きも悪い。旧式なので部屋も狭かった。しかし建物自体が文化財のため、大規模改修ができない。そこにホテル経営のノウハウと資金を持つ東武が入れば、ブランドイメージを維持した新館の建設など、大胆な改革が期待できます」

 再建という難問の答え探しは、緒に就いたばかり。

週刊新潮 2016年9月15日号掲載

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