男子バレーが五輪を逃した敗因…「リベロ制は日本に不利」と川合俊一氏

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 これで愛称が「龍神NIPPON」というのだから、名前負けも甚だしい。先ごろ、リオ五輪出場の道が絶たれた男子バレーボール代表。ホームにもかかわらず、目を覆わんばかりの負けっぷりだった。「開催国枠」で出させて貰える4年後も、推して知るべし。

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世界ではレギュラーに2メートル以上が3、4人というのが当然になっている(イメージ)

 先月28日から東京で始まった五輪最終予選。世界ランク14位の日本は、初戦のベネズエラ(20位)戦に3-1で勝利した。が、その後が無残だった。

「最初の2試合は対戦相手を選べるホームの特権を活かせず、翌日は19位と格下の中国にストレート負けを喫します。ここからポーランド、イランと立て続けに敗れ、2日の豪州戦もストレート負けで、2大会ぶりの五輪出場を逃してしまいました」(スポーツ紙記者)

 直後、日本バレーボール協会の小田勝美・男子強化委員長は“山の中から2メートル級の選手を探そうとしてきた”との言葉を残して辞意を表明。協会の林孝彦・業務執行理事が言う。

「すでに4年後に向けた育成を始めており、『大きな選手を育てなければ』という委員長の発言通りです。が、オランダのように2メートル台がざらにいる国とは違うので、緻密に情報を集めていかねばなりません。我々は年末に各都道府県対抗で中学の選抜大会を開催していて、そこで背の高い子を入れるというルールを作ったり、あるいはご両親の身長を聞いて追跡調査をするなどして進めているところです」

 東京五輪で銅メダル、続くメキシコで銀、そして1972年ミュンヘンで金に輝いた栄光など、見る影もない。

■「リベロ」は不利

 協会のさる元役員は、

「ミュンヘンの前、代表チームでは無名ながらも190㌢以上ある選手を、松平康隆監督が何人も連れてきたことがありました」

 そう振り返りつつ、

「当時は時間差攻撃やBクイック、平行トスなど、すべて日本のお家芸でした。また現在は220カ国が国際バレーボール連盟に加盟しているのに対し、当時はせいぜい100カ国程度。日本の技術はみな吸収され、世界の底上げが著しいのです」

 とはいえ、そうした変化に太刀打ちできなければ言い訳でしかない。元日本代表の川合俊一氏も言う。

「世界ではレギュラーに2メートル以上が3、4人というのが当然になっている。195センチの私より大きいのは、今の代表には2人しかいません。現行ルールは高いチームに有利でありますが、『小さいから仕方ない』では済まないのです」

 その最たるものは、

「98年に採用されたリベロ制度は、実は日本には非常に不利です。それまでは、2メートル超の選手も前線で打ち、バックに回ったらレシーブしなければならなかった。大柄な選手は得てして苦手なので、試合に出せなかったのです。190センチ台の選手が上手にプレーするのが日本だとしたら、外国勢は2メートル台を出してつなぎが悪くなり、大負けするパターンもあった。ところがリベロのおかげで交代でき、大きい選手を遠慮なく出せるようになった。そこから低迷が始まったのだと思います」(同)

 方策はあるのだろうか。

「ブロックの高さでは敵わないので、拾うしかない。3人でサーブレシーブをして、取れなかったら4人に増やす。速さに目を慣らすために、外国へ出かけてどんどん試合をすべきです」(同)

 タレントを呼んでホームで盛り上がっているうちは、お先真っ暗というわけだ。

「ワイド特集 うまい話に裏がある!」より

週刊新潮 2016年6月16日号掲載

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