パリピは何を考えているか ロングインタビューを敢行![フィクサー編]

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■フィクサーとは何者か

 ハロウィンをはじめとする様々なブームの火付け役、拡散役として「パリピ」こと「パーティーピープル」が存在していることについてはすでにお伝えした通りだ。

パリピ経済 パーティーピープルが市場を動かす』の著者、博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダーの原田曜平氏は、同書の中で、実際のパリピたちへのインタビューを行っている。

 登場してくれたのは、慶應大学4年生のY君。彼はパリピの中でもフィクサーに分類されるポジションの人物。フィクサーとは、「トレンドの発信者、もしくは国内にそのトレンドを最初の方に持ち込む若者」のことだ。

クリエイター系フィクサーY君

 Y君の属性を簡単にまとめると、

・父親は外資系コンサルティング会社勤務

・学生でありながら企業から映像制作を請け負い、月10万円程度稼いでいる

・コミュニケーション力、マネージメント力が極めて高い

 といったところになる。

■パリピに話を聞いてみた

 では、実際の生の声をご紹介してみよう(以下、『パリピ経済』より引用)

原田 高校からクラブ通いしてたんですね。実家は東京ですか。

Y君 はい。目黒区です。中学から慶應に。

原田 いま4年生ですよね。就職活動をやっていないと聞いたんですけど。

Y君 今は主にWEBと映像制作でお金を稼いでいるんで、そのまま進みたいです。実はWEBじゃなくて映画制作やVJ(ヴィデオ・ジョッキー)のほうが楽しいんで、本音はそっちで食っていきたいんですけど、まだそっちでは食えるまではいってないですね。

原田 映像制作では、高校生の時に青二祭(都内の私立高校生が中心となって開く大規模イベント)の映像も作っていたんですよね。WEBや映像制作では食えるんですか。

Y君 WEBは儲かる、というかキャッシュ・フローが簡単に作れちゃうんですよ。一人ではなくチームでやってます。映像は単価が高いんですが、そんなにバンバン営業してません。請負で人のために作る映像は楽しくないので。

原田 在学中にそこまでビジネスベースに乗せてるのは大したものだと思いますけど、就職しなくて不安はないんですか?

Y君 ないですね。この仕事に人生を賭けてますし。っていうかあんまり考えてないです。先々のことは。

原田 不況下で育った最近の若い子は安定を絶対に手放したくないと考える人が多いので、安定とやりがいを両立したがる傾向があると思うんですけど。

Y君 僕は違いますね。「就職してウチに来ないか」と誘われたりもしたんですけど、別に現状そんなにバカバカ働きたくないし、それだけで潰されたくはないんで。今はPVを撮ってるバンドが何組かあるので、そういうお金じゃないところで繋がっているものを大事にしたいんですよ。友達みたいな仲間と一緒に、メジャーに上がっていきたい。

原田 とりあえず会社に入って、その業界なりスキルなりを学びたいという気持ちはないんですか。

Y君 うーん、必要な時に必要なものを自分に取り入れたいタイプなんですよ、僕。「いまこのスキルがあるから、次にこれをやろう」というより、達成したいゴールを先に決めて、その上でいまの自分に足りないものを学びたいんです。

原田 会社組織に入って学ぶようなことは、今の自分には必要ないと感じてるんですね。用意されたレールを走るよりは、直感が優先すると。自分にかなり自信がないとできない発想ですね。

Y君 サラリーマンになってしまったら、VJとしてステージに立っているような興奮は得られないでしょうし。それは絶対に手放せません。

 さらにインタビューは続くのだがここでは割愛する。

 おそらく、読者の中にはY君の発言や、彼のような考え方に抵抗を持つ人もいることだろう。「サラリーマンをなめるな!」という声も聞こえてきそうだ。

 しかし、こうした若者からハロウィンなど様々な「ブーム」が生まれていることもまた事実である。

 好むと好まざるとにかかわらず、消費者を対象にしたビジネスに携わる人は、パリピの生態、動向を知っておいたほうがよい、と同書の中で原田氏はアドバイスをしている。「そんな奴らのことなんか知らん」と考えるのは自由だが、ビジネスパーソンは、そう突き放す前に、彼らについて知っておいても損はないのかもしれない。

デイリー新潮編集部

2016年4月22日掲載

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