急いてはいけない「海外不動産投資」リスクの見極め方

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 高利回りを安定して享受するなら、海外不動産投資――「週刊新潮」(2月10日発売号)ではその魅力とリスクをご紹介した。では実際、どのようにリスクを見極めつつアプローチしていけばよいのか。

「まずは時間とお金を惜しまないこと」

 と言うのは、資産デザイン研究所代表の内藤忍氏だ。

「今、海外不動産でネット検索すると、さまざまな物件や業者がヒットすると思います。情報収集の手段のひとつとしてはいいでしょう。でも、最初から買う気マンマンで飛びつくのは危険。怪しいものも結構あるので、まだ“関心がある”程度の段階から情報収集を始めることが必要です」

 情報を集める手段は、ネットだけではない。

「海外不動産投資のセミナーに足を運ぶことが大事です」(同)

 セミナーの多くは、“バンコク不動産セミナー”のような、投資先の国や都市ごとに開かれている。

「セミナーには、海外物件を仲介する業者が必ず出席しています」(アジア太平洋大家の会会長の鈴木学氏)

 海外不動産投資のイロハから、その国や地域の成長性といった情報、さらに具体的な物件が紹介されるが、それ以上に重視すべきは、

「セミナー終了後に行われる懇親会やインフォーマルな飲み会に参加して、参加者との横のつながりを作ることです」(同)

 参加者の中には、他の地域で投資している人もいる。そうした経験者からのナマの情報が有益なのだ。

「SNSでグループを作り、積極的な情報交換をしたりもしています。こうした“投資仲間”は、現地視察見学ツアーに参加し増やしていくこともできます。それなりにお金はかかりますが、情報の入り口を広げること」(内藤氏)

■管理会社が大事

 投資先を、アメリカやカナダ、オーストラリアといった先進国にするか、東南アジアの新興国にするか。期待できる利回りは、前者の5%以上に対して、後者は8〜10%と魅力的だが、

「先進国は不動産市場が成熟しているから、メールを英語でやりとりする以外は、日本とほぼ同じ感覚で投資できますが、新興国ではそうはいきません」(鈴木氏)

 例えば新興国の場合……3年後竣工のマンションが売りに出ていたとする。売主は現地デベロッパーで、日本人が仲介業者だ。

「仲介業者は名義変更や契約のサポートをしてくれ、1000万円の物件ならその5%、2000万〜3000万円なら3%ほどを手数料として徴収しますが、仲介業者の仕事はここまで」(同)

 最も重要なのは入居者の募集や家賃の徴収、物件の管理をする管理会社だが、

「新興国の場合、それが未成熟です。仲介業者が管理会社を紹介してくれればいいほうで、たいていはデベロッパーの管理部門が担当しますが、こちらが思ったように動いてくれない場合が多いのです」(同)

 家賃設定などが適正なのかどうか確かめる術がない。

「その意味でも、先行して投資している日本人のナマの情報が重要です」(同)

 一方先進国の場合、こうしたリスクは小さいが、物件が高いという問題がある。

「自己資金を3割、残りを現地銀行でのローンにできます。カナダやオーストラリア、ニュージーランドだと、日本での収入証明があれば大丈夫。ただし金利は3〜5%と高いので、利回りがそれ以上ある物件を選ばなければなりません」(同)

 物件価格が下落して担保割れしても、

「ノンリコースローンがほとんどなので、売却後の残債は銀行負担です」(同)

 逆に担保価値が上がれば、

「上昇分を“みなし自己資金”として新規物件に投資することもできます」(同)

 さまざまな角度から情報を集めてリスクを見極めること。急いては事を仕損じる、のだ。

週刊新潮 2016年2月25日号掲載

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