2つの日本一と全国3位の部活がある“新世代”のスポーツ強豪校「東福岡高校」

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 たとえば高校野球で“最強”と言えば、どのチームを思い浮かべるだろうか。

 名将・蔦文也監督率いる“やまびこ打線”の池田高校や、清原和博・桑田真澄の“KKコンビ”を擁したPL学園、さらに、松坂大輔を不動のエースに据えた横浜高校も外せまい。

 いずれも甲子園を制覇した名門校ばかりだが、同じ“日本一”でも目下、高校スポーツ界に旋風を巻き起こしている「東福岡高校」はひと味違う。野球部こそ含まれないものの、年明け早々、3つの部が同時に日本一に挑んだのである。

東福岡高校

 これには、スポーツ紙記者も驚きを隠せない。

「年始は高校スポーツのビッグタイトルが目白押しです。なかでも今年、最も話題を集めたのは東福岡でした。何しろ、ラグビー、サッカー、バレーボールの3競技を制して、“3冠”を成し遂げる可能性がありましたからね」

 だが結果として、この偉業が果たされることはなかった。今月7日、前回王者として“冬の花園”に臨んだラグビー部は、準決勝で東海大仰星に2点差の惜敗を喫してしまう。それでも、

「バレー部は10日の決勝戦でストレート勝ちし、“春高バレー”を連覇で飾りました。かつてユニフォームカラーにちなんで“赤い彗星”と呼ばれたサッカー部も、翌11日に行われた全国高校サッカー選手権で17年ぶりの優勝。決勝戦は国学院久我山を5-0で破る圧勝でした」(同)

東福岡高校のバレー部

 かくして、年明けから2週間足らずで、福岡県福岡市博多区にある男子校には2つの日本一と、全国3位の称号がもたらされ、その活躍はスポーツ紙でも大々的に取り上げられた。

 さて、ここまで聞けば、誰しも想像することは同じはずだ。どうせ、全国にスカウト網を張り巡らせて有望な中学生を青田買いし、学費免除で早朝から深夜まで練習漬けの生活を強いた結果だろう、と。

 それでは選手たちは、どれほど過酷な“スポ根”指導を受けているのか。

「その質問はよく受けますが、あまり面白い回答ができないんです」

 と、苦笑するのは松原功校長である。

「どの部活も毎年、入学した生徒を鍛えて新たに強いチームに仕上げていく。その繰り返しです。成績別のコースはあっても、いわゆるスポーツコースはありません。もちろん、特待生は一部いますけど、授業料の減免待遇が主で、寮費などは自費です。部活をしていても特別扱いはしないため、赤点を取れば追試までは試合に出られません。バレー部やラグビー部はほとんどが地元出身で、県外の生徒が多いのはサッカー部くらいでしょうか」

“朝練ナシ”“学業優先”を掲げる新世代のスポーツ強豪校

 昨年、前身の福岡米語義塾の創立から70周年を迎えた東福岡は、スポーツ界に数多くの卒業生が輩出している。セリエAのインテルで活躍する長友佑都を筆頭に、がん闘病中の妻・北斗晶を支える佐々木健介も柔道部OBだ。

 巨人軍の村田修一もその1人で、

「セパ交流戦で福岡を訪れた時は、こっそり来校して食堂で390円のから揚げ定食を食べていたと聞いています。青春の思い出の味なんでしょうね」(同)

“文武両道の男子進学校”をスローガンに掲げるが、地元の予備校関係者は、

「修猷館や筑紫丘、福岡などの公立トップ校と比べると、特進コースでも偏差値が10ポイントほど低く、滑り止めという印象。とはいえ、京大や九大にも合格者を出す中堅私学です」

 学業重視の方針から、原則的に部活の朝練は認めず、放課後の練習も2~4時間程度という。にもかかわらず、強豪校としての地位を築いた、まさに“新世代”のスポーツ校だ。

「特集 サッカーとバレーは日本一! ラグビーは全国3位! 高校スポーツを席巻する『東福岡高校』の研究」より

週刊新潮 2016年1月28日号掲載

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