世界に評価される日本のアート・アニメ 実は宮崎駿より有名? 85歳の巨匠

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 今年の米アカデミー賞・長編アニメ映画賞部門に『風立ちぬ』(宮崎駿監督)がノミネートされていたが、実は短編アニメ部門にノミネートされていた『九十九(つくも)』(森田修平監督)も、関係者の期待が大きかった。

 同作は、大友克洋監督らによる短編アニメ4本のオムニバス作品『SHORT PEACE』の中の1本だが、すでに仏アヌシー国際アニメ映画際や、広島国際アニメーションフェスティバルなどで上映されて、高い評価を得ていた短編だ。

国内より海外で評価される日本のアート・アニメ

 いまや、日本の短編アート・アニメは、世界中で注目の的なのである。知らないのは、われわれ日本人ばかりというのが実情だ。

 今年のベルリン国際映画祭でも短編コンペ部門に、日本のアニメが2作品登場し、受賞は逃したものの、たいへんな話題となった。『WONDER』(水江未来監督)と、『かまくら』(水尻自子監督)だ。

 前者の水江未来監督は、上記アヌシー、広島を含む「世界4大アニメ映画祭」すべてにノミネートされた経験があるベテランだ。その独特な表現スタイルは、いまや「世界のミズエ」と称されており、海外のアニメ・コンペで審査員もつとめている。

 後者の水尻自子(みずしりよりこ)監督も、すでに『布団』という短編が高い評価を得ており、文化庁メディア芸術祭のアニメーション部門新人賞なども受賞している。そのユニークな作風は柔らかい動きがどこかエロティックで、ジャパン・アート・アニメ界の巨匠・久里洋二氏による大人アニメの世界をさらに柔軟にしたかのようだ。

ジャパン・アート・アニメの先駆者

 久里氏は世界的な評価を受け、ヴェネツィア国際映画祭、アヌシー国際アニメーション映画祭など、世界中のなだたる映画祭でことごとく受賞している。本人も「いくつ受賞したか、覚えていない」ばかりか「重いので、トロフィーを置いてきたこともある」ほど。

 85歳となる今も健在で、数年前にはTwitterも始め、手塚治虫との交流や自身のアニメ観などを惜しげもなく披露したそのツイートは書籍『ボクのつぶやき自伝―@yojikuri―』(新潮社刊)にもまとめられている。

 そんな久里氏が講師をつとめる「学校」がある。第二の水江氏、水尻氏を目指して、若きアニメ作家志望者たちが通う東京・阿佐ヶ谷の「アート・アニメーションのちいさな学校」だ。ここでは、昔ながらの平面アニメもさることながら、いまやほかでは学ぶことが難しい、人形立体アニメの指導も行なわれている。来たる3月29日(土)、30日(日)には、この一年間の成果を発表する上映会「アニメに恋する上映会」も開催される。

 アート・アニメは一般興行が難しいので、こうした上映会などで観るしかない。今後、水江氏や水尻氏、久里氏のように世界的にブレイクする前の作家を「発見」するのも、アート・アニメの楽しみ方のひとつではないだろうか。

デイリー新潮編集部

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