「いっこく堂」がTBSの番組に苦情 ディレクターに不満を言う芸人が増えている理由

エンタメ 芸能

  • ブックマーク

Advertisement

「人生イロイロ超会議」でトラブル

 腹話術師のいっこく堂(56)がTBSの番組に出演、放送後にブログで「誤解を招く内容があった」と指摘した。たちまちTBSへの非難がネット上にあふれ、炎上状態になったことをご存知だろうか。

 ***

 問題となった番組は「有田哲平と高嶋ちさ子の人生イロイロ超会議」(月曜・20:00)。11月18日にオンエアされたもので、この日は《日本を代表するエンターテイナー》を紹介するという内容で、その1人がいっこく堂だった。テレビ担当記者が解説する。

「放送翌日にブログで記事が公開されました。問題視されたのは2点です。いっこく堂さんは海外でも人気があります。番組では『海外公演は全て現地の言葉で演じている』とのナレーションを入れました。これをいっこく堂さんは『冒頭の15分程度は、現地の言葉を丸暗記して演じています』と訂正しました。さらに『人形は1体7・8キロ』と紹介したことにも触れ、事前の打ち合わせでスタッフには『一番重たい人形は7・8キロ』と説明していたことも指摘しました」

 たちまちネットは沸騰した。ツイッターで検索してみると、以下のようなツイートが表示される。(註:引用はデイリー新潮の表記法に合わせた、以下同)。

《ニュースは元々ダメな上にバラエティーもヤラセしてまたこれとは…テレビ局としての価値を疑いますわ…》

《些末な事とは言え、正しくない事をハッキリしとかないと、独り歩きして思わないことが起こる怖さ。TBSは過去に、宗教団体に放送前の取材内容を見せて、結果的に犯罪を招いた経緯がある》

 先日のヤラセ発覚や、かつてのオウム問題まで持ち出され、さすがにまずいと思ったのか、いっこく堂は沈静化を要請した。21日に「大ごとに」と題した記事をブログにアップ。《まさかの大ごとに発信した自分が萎縮しています》と語ったのだ。

「いっこく堂さんは『番組に対しては、一切怒りはありません』、『番組としては私をいかに凄いか!として作ってくれたのですから、その気持ちも理解できます』とフォロー。前回の記事をアップした理由として『外国語が話せるような印象を持たれたらそれは本当に困ります』と説明しました。そして記事の最後では『番組関係者の皆さん、せっかく楽しく番組を作ってくださったのに、不快な思いをさせてしまい、申し訳ありませんでした』と謝罪していました」(同・テレビ担当記者)

 一応、騒動は収まりつつあるようだが、実は水面下では似たような事例が頻発している。テレビ番組の制作に携わるベテランスタッフは、「いっこく堂さんのように表面化するのが珍しいだけで、最近は芸人さんがスタッフに苦情を言うことが増えています」と声を潜めて明かす。

「芸人さんの発言を間違った解釈で使ってしまったり、編集に芸人さんが納得しなかったりというトラブルが増えています。理由としては、若いディレクターと芸人さんの間で、コミュニケーションが不足しているケースが多いですね」

 近年、「出演者に、しっかり指示できない」、「自分の考えを伝えられない」、「出演者の意見に同調しすぎてしまう」という若手ディレクターが増えているのだという。

「明石家さんまさん(64)や、ダウンタウンの松本人志さん(56)くらいの大ベテランになると、『今の話カットね』とか『ここ絶対に切るなよ!』と笑いを取りますが、あれは私たちが編集しやすくなることまで考えたギャグなんです。それほどの技術をお持ちですから、ベテランの芸人さんが苦情を口にすることはありません。新人の芸人さんも同じで、こちらは出演できるだけで嬉しいからです。そのため、やはり苦情は、中堅の芸人さんが中心となります」(同・スタッフ)

 スタッフ氏は「昔は苦情など考えられませんでした」と振り返る。出演した芸人に「編集で面白くしてもらいました」と感謝されてこそ、プロのディレクターだと考えられていたという。

「昔はテレビを見る人が多かったため、現場には予算も時間もありました。企画を練り、台本の完成度を追求し、撮影ではスタッフも出演者もコミュニケーションをしっかり取っていました。だからこそ『台本と演出で面白くしてもらった』と芸人さんが感謝してくれることも珍しくなく、ディレクターとの信頼関係が構築されていたのだと思います」

 ところが近年は、老若男女でテレビ離れが進み、現場では予算削減が至上命題になっている。働き方改革も手伝って、クオリティの追求よりは「効率のいい撮影」が求められるようになった。

「バラエティ番組ですと、出演者に頼りっぱなしの番組が増えています。芸人さんは応えてくれるわけです。スタジオでもロケでも、芸人さんたちは、フリ、ボケ、オチを練り上げて喋ります。チームワークで笑いを取るんです。それをスタッフは撮影するだけです。台本も演出もありません。芸人さんたちの努力や計算を理解できず、一方的に編集でカットされたり、誤解をまねくナレーションを付けられたりしたら、それは怒るに決まっています。残念なことに『最近、笑いのわからないスタッフが増えていないか?』と芸人さんたちが内緒話をすることも増えているようです」(同・スタッフ)

週刊新潮WEB取材班

週刊新潮 2019年11月30日掲載

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。