「稲田朋美」防衛相が気持ち悪い 国会で涙、国会外で被害者意識

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稲田朋美防衛相

「私は今日も国会で、今日も国会で質問攻めに遭ってきました」

 稲田朋美防衛相(58)は大声でこう強調した。まるで自分が被害者であるかのように――。

 日米首脳会談では蜜月関係を築き、心配されていた株価が下がることもない。約6割の高支持率を誇る安倍内閣は盤石なものに思える。しかし、「爆弾」を抱えていないわけではない。

〈抗議集会で稲田氏批判〉(2月20日付朝日新聞)

〈稲田防衛相 省内を統率しているか〉(同月17日付毎日新聞)

〈4野党、稲田氏の辞任要求〉(同月16日付産経新聞)

 こうして連日紙面を賑わせている稲田防衛相。安倍総理の「秘蔵っ子」と持て囃(はや)されたのは、彼女のトレードマークである眼鏡を掛けても霞んで見えないほど、遥か遠い過去に思えてくる。

■産経新聞までもが…

 そんな「爆弾大臣」の来し方をまず振り返っておくと、保守系の弁護士として活動していた彼女に安倍総理が目をつけ、2005年の郵政選挙に「刺客」として初出馬。以来、14年には当選3回ながら異例の若さで自民党政調会長に抜擢され、昨年8月には防衛相に引き立てられるといった具合に、政界のシンデレラ街道を歩んできた。

「幅広い分野の政策を勉強するために政調会長、苦手な安全保障をより専門的に学ぶために防衛大臣と、安倍さんの英才教育が施(ほどこ)されてきました」(自民党職員)

 それが贔屓(ひいき)の引き倒しになっているのだから皮肉な話だが、現在彼女が批判の矢面に立たされている「日報問題」について、政治部デスクが解説する。

「自衛隊は今、南スーダンでPKO(国連平和維持活動)を展開していますが、現地はかなり危険で、自衛隊を派遣すべき状況ではないと指摘されています。実際、昨年7月には政府軍と反政府勢力が大規模な衝突を起こしている。そこで、昨年10月にジャーナリストが、陸上自衛隊の現地派遣部隊が作成した7月の日報を明らかにせよと、防衛省に情報公開請求をしたんです」

 これに対して同省は、日報は廃棄されているとして不開示を決定。ところが、

「12月22日、自民党の河野太郎さん(元公文書管理担当相)が、データは残っているはずだと再調査を求めると、一転、不思議なことにやはり残っていたということになり、2月7日になってようやく一部黒塗りで日報は公開されました。野党はこの経緯を、防衛省が日報を隠蔽しようとしたとして稲田さんを追及し、辞任を求めています。一方の彼女は、実は河野さんより早く再調査を指示していたと説明し、隠蔽ではなかったと繰り返している。しかし、稲田さんの答弁が頼りないこともあり、野党の攻勢は続いています」(同)

 この稲田氏を巡る惨状は、最も「安倍政権寄り」とされる産経新聞までが、

〈民進党の辻元清美氏は、南スーダン国連平和維持活動(PKO)派遣部隊の日報の問題に絡み「シリアの内戦は『戦闘』か『衝突』か」と定義をただしたが、稲田氏は「法的な評価をしていない」などと曖昧な答弁に終始した〉(2月15日付)

 こう報じざるを得なかったほどだ。当の稲田氏は、

「(当該の)文書を探索しきれなかったことは、充分な対応ではなかった」

 と、記者会見で陳謝し、表向きは反省している姿を見せていたのだが……。

■「無理難題を言われている」

「防衛大臣になってから、臨時国会でもずっと攻められてきて、今回(通常国会)は大丈夫かなと思ったんですけど、もう俄(にわか)に攻められまして」

 2月17日夜、稲田氏はマスコミをシャットアウトして開催された都内での会合で、冒頭に紹介したセリフに続けこう話し始めた。そして、会合の出席者によれば、彼女はこんな風に言葉を継いだ。

「私がもう1回日報を探しなさいと言ったら、統幕で見つかった。だから公開したんです。私が探せと言って、公開までに1カ月くらい掛かったのは申し訳なかったと思いますけど、それを今、攻められていて、『隠蔽!』『隠蔽!』って。隠蔽大臣とか言われてるんですが、私が資料を出せと言ったんです」

「ところが、『隠蔽した!』『隠蔽した!』って、もう決めつけて、『消したんだったらいつ消したのか、全部出せ』とか、無理難題を言われているのが現状です」

「答弁で私が長く喋ろうとすると、野党の質問は長いくせに、『そんなことは聞いていない!』『うるさい!』と、遮っ(さえぎ)てくるんですよ」

 曖昧な答弁で野党を勢い付かせているのは、他ならぬ稲田氏本人である。にも拘(かかわ)らずのこの言い草は、悪いのは野党であって自分ではないと言わんばかりではないか。これを世間では愚痴と言う。少なくとも混乱を招いている組織の長がすべき発言ではあるまい。

■ここ10年で一番ダメな防衛大臣

 なにしろ、ある陸自幹部OB曰く、

「稲田さんは南スーダンについて猛勉強中で、一日数時間、事務方からレクチャーを受けていると聞きます。その分、他の業務は滞る可能性もあるでしょうし、事務方は昼間は大臣レクチャー、夜は野党議員からの質問取りと、寝る暇もないそうですよ」

 愚痴りたいのは、稲田氏を戴(いただ)いてしまった防衛省の役人のほうなのである。

 続けて軍事ジャーナリストの世良光弘氏が、

「彼女の知識不足、理解不足、拙(つたな)い答弁を見ていると、ここ10年で一番ダメな防衛大臣だと思います。彼女のせいで、国会審議が実質的に止まってしまっている状況なのに、会合に出掛けて行って言い訳をしている場合ではありません」

 と、「もしもし大臣」こと田中直紀元防衛相以下との烙印を押せば、危機管理コンサルタントの田中辰巳氏も呆れる。

「そもそも、野党の追及を恐れる必要はありません。企業にも日々様々なクレームが舞い込みますが、それを糧に商品の品質改善に繋げていくもの。稲田さんも、野党の声を利用する懐の深さがなければ、大臣職を務めていくのは難しいのではないでしょうか。彼女は極めて感情的で、大臣が語るべき“公”の損得ではなく、『国会でいじめられている』と、“私”の損得だけを語っている印象を受けます」

 つまり、防衛を司(つかさど)る重責を担う彼女の、「存在の耐えられない軽さ」が改めて注目を集めているわけだが、遡(さかのぼ)れば、稲田氏は安倍政権にとって常に「火種」であった。

 やることなすこと評判の悪い稲田氏だが、現在進行形の日報問題に関するこの会合での発言について、防衛省を通じ、

「ご指摘のような話は、しておりません」

 と、回答。もう1度、ご自身の記憶を辿り直してみたほうがよろしいかと思うのだが……。

特集「安倍内閣を弱らせる『網タイツの一穴』国会で涙 国会外で被害者意識 『稲田朋美』防衛相が気持ち悪い」より

週刊新潮 2017年3月2日号掲載

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