聖域なきリストラでも…瀕死の「東芝」が報酬を払い続ける5人の「奥の院」

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資産を切り売り中

 2月14日に予定していた決算発表を1カ月延期した東芝。目下、債務超過、上場廃止、そして解体という最悪のシナリオを回避するために資産を切り売りしている。だが、聖域なきリストラを掲げる綱川智社長(61)にも、未だに手を付けられない“奥の院”があるというのだ。

 東芝が決算発表を予定していた日の4日前、東京・高輪にある迎賓館「東芝山口記念館」の売却が明らかになった。東芝本社の営業部門に勤務する社員によれば、

「あそこは役員たちの“社交場”でしたから、綱川社長も忸怩たる思いでしょう。売り先は日本テレビホールディングスで、売却額は社内でも公になっていません。ここまで来たら、“奥の院の5人組”にも手を付けるべきだと思います」

“奥の院の5人組”とは、前社長の室町正志氏(66)を始めとする歴代の社長、会長経験者たちを指す。経済誌記者が言うには、

「東芝は昨年2月に相談役制度の廃止と、顧問制度の見直しを発表しました。ですが、その4カ月後には定款を変更して、特別顧問に加え、名誉顧問のポストを新設したのです」

 特別顧問には室町前社長が就任。昨年3月まで日本郵政の社長だった西室泰三氏(81)も、相談役から名誉顧問に肩書が変わっている。

「西室さんは昨夏まで週に2、3日は会社に顔を出し、本社38階の“西室ルーム”と呼ばれる執務室に鎮座していました。体調を崩して出社しなくなると、さすがに執務室は廃止されましたが、それまで秘書もいたし、専属ドライバーもいました」(同)

 西室氏以外にも“奥の院”に居座り続けている名誉顧問は、過去に社長を務めた岡村正氏、佐藤文夫氏、渡里(わたり)杉一郎氏の3人だ。

■“A級戦犯”にも

「彼らの存在は、老害のひと言に尽きます」

 こう憤りを隠さないのは、東芝OBだ。

「78歳の岡村さんは西室さんより3歳年下ですが、佐藤さんは88歳で、最長老の渡里さんに至っては91歳。しかも、彼はかつて会社を窮地に追い込んだ責任があるのです」

 渡里氏が社長に就任したのは1986年4月。その翌年、子会社「東芝機械」の、当時は禁じられていたソ連への工作機械輸出が発覚した。いわゆる、東芝機械ココム事件である。
「東芝機械の幹部2人が外為法違反容疑で警視庁に逮捕されたこともあり、渡里さんは就任からわずか1年3カ月で引責辞任しました。すべて彼の責任とまでは言わないが、対応のまずさで会社を窮地に追い込んだのも事実。そんな“A級戦犯”に30年近くも、大金を払い続ける必要があるのでしょうか」(同)

 東芝は、名誉顧問などに報酬を支払っている事実は認めたものの、その詳細は“公表していない”の一点張りだった。本社企画部門の中堅幹部がこう囁く。

「特別顧問や名誉顧問への報酬は、販売促進費として処理されているので対外的には調べようがありません。社内でも、一握りの役員や経理部門の責任者くらいしか把握できない“極秘事項”ですが、1人年間2000万円は下らないはずです」

 東芝社員の平均年収は約844万円だが、

「綱川社長は、昨年から実施している社員のボーナスカットの延長を検討していると明言しました。財務状況を考えれば、社員の基本給にも手を付けざるを得なくなる日はそう遠くないでしょう」(先の記者)

 社員に血を流す覚悟を強いるならば、まず“奥の院の老害たち”をリストラするのが先ではないか。そんな怨嗟の声が聞こえてきそうだ。

週刊新潮 2017年2月23日号掲載

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