まだやめていないと疑われた「ASKA」長文ブログの被害妄想

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 頭を胴から外し、脳を病院に預けて洗ったりしてもらえないか。川端康成著『山の音』で、初老の主人公がうそぶく。あたかも囚われの身となったごときその人の心模様を見るにつけ、この一節が浮かぶのである。9万5000字に垂(なんな)んとする長文ブログで、自身を追い詰める「悪の結社」との斬り結びを明かしたASKA(57)。そこには被害妄想が猖獗(しょうけつ)するばかりで、結果、まだ覚醒剤をやめていないと疑われるお粗末さなのだ。

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アルバム発売して復帰したい!

 2014年9月、覚醒剤取締法違反で有罪判決を受けてからというもの、沈黙してきたASKA。それが破られたのは去る9日夕方のことである。もっとも、この20章構成の文章は公開後すぐ削除され、いまは読むことができない。

「ASKAが家族の反対を押し切って、告白本の出版を計画しているという話が拡がっていました。かれこれ2週間ほど前のことです」

 と言うのは、全国紙の社会部デスクである。

「彼に覚醒剤を譲り渡すなどして逮捕された者はかなりの数にのぼるので、警察当局も注目していたのです。で、今回の文面を読んだ彼らからは、“治療がうまくいってない”という指摘はもちろん、“また覚醒剤を始めたんじゃないか”と疑う声も聞こえてきました」

 ブログでは、初めて麻薬を使用した日のことや逮捕時の様子、愛人(オンナ)とのメールのやり取りなどが描写される。作り溜めた散文詩が挿入されるなか、ハイライトが「盗聴盗撮集団」との飽くなき戦いの記録である。

 某日、気になるホームページを見つけたASKAは、

〈私が電話で喋ったことや行動したことが克明に書かれているのだ。「盗聴?」誰も信じようとはしない。誰かに監視されている〉

 と決めつける。やがて、

〈携帯を持っていると家族との会話まで公開されるようになった。携帯の前で、「オマエら、いい加減にしろ!何が楽しいんだ!」と怒鳴ってみた。すると、「さあ、今日なんと神のお声を頂きました」と、ページに書いてくる始末〉

 精神科医の片田珠美氏によると、

「自分が常に誰かから探られたり監視されたりしていると思い込むのは、『注察妄想』。また、見えない敵に襲われる恐怖から戦わなければならないと考えるのは『包囲襲来妄想』。これらは覚醒剤常用者によく見られます。ときには、統合失調症との鑑別診断が難しい場合もあります」

■一刻も早く

 秘密結社と対峙しては、「決定的な証拠を手に入れてみせる」と忙しないASKA。が、その完璧主義が覚醒剤というぬかるみに自身を嵌らせたと訴えるのだ。

〈身体が急に楽になったのだ。二口、三口吸うと、どんどん楽になる。その日も、朝まで証拠集めをした〉

 証拠獲得作業はクスリをやっている最中にも進めた。

〈私はパソコンの前でこれ見よがしに吸引をした。これで証拠が取れるなら良いと思ったからだ〉

 結社側もすかさず反応し、

〈「今、ツコタ」と書き込まれた。ターボライターの音を聞いているのだ。「ツコタ」とは「使った」という意味である。「アイツは眠らずの薬を持ってるからなぁ」とも書き込まれる〉

 再び片田氏の分析。

「仮に覚醒剤をやめたとしても、その後、一定の割合で残存症状が見られます。例えば、およそ40%の人に猜疑心の拡大など人格変化が、20%の人に幻聴などが、そして10%の人に被害妄想の症状が残ると言われている。ASKAさんのブログを拝見する限り、このすべてが揃ってしまっているようです」

 いわば覚醒剤経験者が避けて通れぬ通過儀礼なのだ。

 さらに悪いことに、

〈「盗聴盗撮」を口にしただけで杓子定規のように「精神病」とされてしまうことには大きな反発がある〉

〈集団に監視されているということで、精神は疲労していたが、精神力は人並み以上にあると信じている〉

 などといった口ぶりから察すると、彼には病識が全くないようである。

「客観的な判断力や観察力が戻っているとは言い難く、重篤な症状にあると」(同)

 したがって、

「一刻も早く精神科病院や薬物更生施設に入所し、治療を行なうことが必要。覚醒剤の服用というのは脳に不可逆的な変化を及ぼしてしまう。つまり一度手を出したら、そのあとやめたからと言って脳は元には戻らない。裏返して言えば、このASKAさんの姿こそ、覚醒剤がいかに恐ろしいものであるかを示しているのです」

 最後に彼は、盗聴盗撮集団にこう告げるのだ。

〈君たちに時間を与えるつもりはない。この場で直ぐに止めることを強く要求する。これは最終警告だ〉

 ところで、冒頭の主人公の言葉を受けた義理の娘はこう反応している。

「お父さま、お疲れなんでしょう」

 声はASKAにも届くか。

「ワイド特集 大人たちの通過儀礼」より

週刊新潮 2016年1月21日号掲載

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