伝説の相場師「加藤アキラ」が最後にすがった高級エステと十一面観音

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 坂本龍馬しかり、風雲児と呼ばれた人の末路は、哀れなことが多い。「兜町の風雲児」として鳴らした加藤アキラ(74)もまたしかり。病魔にも侵されながら、最後にすがったのは、高級エステと十一面観音だった。

 ホテルオークラにある高級エステサロンに、加藤夫妻が初めて現れたのは、一昨年の秋口だった。

「ご夫妻で週に3回ほどいらして、毎月100万円ほど使っていただいたでしょうか。うちは女性専用サロンですが、会員のご家族は男性も例外的に受けていただけます。加藤様は人工透析をされていて、お住まいはオークラと目と鼻の先なのに、運転手つきの車などで見え、“痩せたので元気よく見せたい”とおっしゃり、奥様は“顔色がよくなって本人も喜んでいる”と話されていました」

 そう語るのはエステの関係者。大量のケーキを頻繁に差し入れてくれる加藤は、サロンで昔語りも辞さなかったという。加藤と親交がある投資家に“昔”を代弁してもらうと、

「1981年、代表を務めた誠備グループによる宮地鉄工所の仕手戦で、脱税で逮捕されましたが、仮名口座の客の名を一切明かさず、口が堅いと評価された。89年の本州製紙の仕手戦を最後にしばらく表舞台から消えますが、阪神大震災が起きた95年、新しい風の会を設立して兼松日産農林を手がけた。東日本大震災が起きた2011年、般若の会を作って復活、新日本理化などの株価を釣り上げた。震災による株価下落のタイミングを狙ったんですね」

 で、般若の会運営のサイト「時々の鐘の音」に、株価上昇を示唆する書き込みを続けた末、11月17日、金融商品取引法違反(相場操縦)の疑いで、妻と長男もろとも逮捕されたのである。

■毎日お参りして

「加藤さんは糖尿がかなり悪化し、実際、何度か倒れて救急車で運ばれ、そのたびに死亡説が流れた」

 と、先の投資家は話すが、エステには通い続け、先のエステ関係者の話では、

「必ず、浅草の待乳山聖天本龍院というお寺にお参りしてからいらしていた。お寺には毎日行くとおっしゃっていました。ご本尊の十一面観音をご信仰されているとのことでした」

 体調がよければ歩き、透析を受けた日は車椅子を使っていたという。

「以前、当山の開山1410年記念事業があって、加藤さん名義で1000万円、奥様と息子様名義で100万円ずつ、寄付していただいています」(住職)

 だが、ご利益はなかったということか。元東京地検特捜部副部長の若狭勝代議士によれば、

「昨今、金融商品取引法関係は厳罰化の方に進んでいる。以前なら執行猶予がついた事件も、最近は実刑が科せられることが多い」

 しかも、加藤の心配の種は、溺愛する長男の将来だろう。サイトに実際に書き込んでいたのは、東大で数理科学の博士号を取得した阪大助教の恭(36)なので、

「当局の狙いは加藤さんの息子と聞く」(先の投資家)

 最後に一旗揚げたい、と語っていたという加藤。旗が愛息の足をすくったなら、哀れというほかない。

「ワイド特集 絶頂期の盲点」より

週刊新潮 2015年12月3日号掲載

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