「老後の蓄えを」で無理な資産運用から生活保護に 激増する「老後破産」(2)

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 悠々自適の豊かな老後――。たいていの人は現役時代、汗水たらして働きながら、そんな日々を心に描いているはずだが、真逆の現実に苛まれる人が激増しているという。いまや誰が陥ってもおかしくない「老後破産」。「激増する『老後破産』(1)」では住宅ローンの返済計画の破綻から破産に追い込まれるケースをみてきた。

 ファイナンシャル・プランナーの紀平正幸氏は老後破産の予防策として、「無理な資産運用をしない」ことを挙げ、こんな例を示す。

「私のところに相談にきた自営業の方は、還暦を機に事業を第三者に3000万円で譲渡しました。それが退職金代わりの“老後の命綱”だったのですが、銀行の営業マンに勧められるまま、国内株と海外株の投資信託に数百万円ずつ突っ込んでしまった。年利20%にもなるという触れ込みでしたが、株価が暴落して投資額の半分が飛び、取り戻すためにまた投資。最後はリーマンショックの煽りで大暴落し、手元に200万円しか残らなかったんですね。持ち家も手放して、関東近郊の家賃3万5000円のアパートに引っ越し、生活保護を受給しています」

 一方、埼玉県川口市の町村英明さん(73)=仮名=は、老後を迎える前に投資に走ったケースである。

「百科事典などのセールスの仕事で、月に40万~50万円稼いでいて、31歳のとき、30年ほどのローンを組んで6000万円の家を買いました。90年ごろ、不動産営業に携わっていたとき、不動産投資で老後資金を稼ごうと銀行に融資を頼むと、家を担保にするなら5000万円貸せるといわれた。結局、5500万円を借りてローンは完済し、月に15万円ほどの利息だけ払いながら、元本は大儲けしたら返すつもりでいました」

 ところが、バブルが崩壊して収入は激減。一方、銀行は“元本を返せ”と催促してくるようになった。

「58歳のとき、返済プランを組み直すと、98歳まで月17万円払わなければならないという。しばらく払いましたが、収入が減って払えなくなった時点で、自宅を2800万円で売却。現在、家賃8万円のアパートに住み、警備のアルバイトをしながら、約1000万円の残債を返しています」

 次回「激増する『老後破産』(3)」では老後の生活を追い詰める社会保障費についてみてゆく。

週刊新潮 2015年9月10号掲載

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