早実・清宮幸太郎から四番を奪った“怪物1年生”野村大樹

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 俗に、組織を発展させるには“新しい血”を入れろと言う。1年前、甲子園を賑わせたのは西東京代表・早稲田実業の清宮幸太郎クン。その「怪物ルーキー」に勝るとも劣らぬ逸材が、早くも現れたというのだ。

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「四番は慣れましたけど……清宮さんの後は緊張します」と野村君

 早実は昨夏、準決勝で敗退。「また戻ってくるから」と、清宮クンがグラウンドの土を持ち帰らなかったのは記憶に新しい。が、その後チームは今春のセンバツ出場を逃し、さらに夏に向けても暗雲が……。スポーツ紙記者が言う。

「早実の目下の課題は投手陣です。4月に行われた春季都大会の2回戦では都立昭和に満塁本塁打を浴び、逆転負けを喫しました。四番に座った清宮君も徹底マークされ、打線が繋がらなかった。これでチームは、きたる西東京予選にノーシードで臨むはめになったのです」

 そこに登場したのが“怪物2世”。連続出場に向け、俄然光が射し始め――。

「入部したての1年生キャッチャー・野村大樹(だいじゅ)君です。京都の同志社中時代は、『大阪福島リトルシニア』に所属し、15歳以下の日本代表でも四番を打っていました」(同)

 4月29日に行われた関東一高との練習試合では、清宮クンを三番に押しのけ、

「四番で出場し、いきなりホームランを放ちました。さらに5月29日には長野の強豪・松商学園相手に、2試合で6打数5安打4四球。172センチ、80キロの体で豪快にスイングし、早くも高校通算3本塁打を記録しています」(同)

■教育の賜物

 昨年まで指導した大阪福島シニアの中尾学監督は、

「中2でチームに入ってから打率は8割、本塁打は30本くらい打ちました。球種や配球を読む分析力に長けていて、素振りでは『トップからこの位置までを500回』というように、自分のスイングを独自に分割して“振り切らない”練習をするほど研究熱心だった。試合中もランナーが出ると、私の横で『ここはエンドランやな』なんて言い、ちゃんと当たるのです」

 そう振り返り、三好廣幸コーチも、

「右への流し打ちが上手い。中学生の場合、好打者が相手だとどうしても外角勝負になるのですが、それを読んで逆らわず、きれいに右中間に流していました。ホームランも120メートルくらい飛ばすので、桁違いです」

 キャッチャーで頭脳派かつ豪快、そして体型からも漫画の「ドカベン」を彷彿とさせるのだが、家庭で培われた部分も大きいという。

「親御さんが教育熱心で、勉強して同志社に入ってからも『学業が疎(おろそ)かになるから野球はやめろ』と言われた時期がありました。それでも早実に進んだのは、お父さんに“野球を続けたいのなら早慶に行け”と言われたからだそうです。自宅のある宝塚から京都まで、電車で2時間近くかけて通っていましたが、車中ではずっと勉強して頑張っていましたね」(前出・中尾監督)

 実際に同志社中の教諭も、

「全日本の四番を打ちながら、本校の三大行事である体育祭・文化祭・合唱祭にも熱心に打ち込んでいました。廊下で会うとにこやかに挨拶する、文武両道を地で行くような子でした」

 5日には、ミスターの母校である千葉県立佐倉高との「ON母校対決戦」で先発。やはり四番を任されていた野村君に尋ねると、

「四番は慣れましたけど……清宮さんの後は緊張します」

 甲子園でも、その強力打線を目にできるのだろうか。

「ワイド特集 うまい話に裏がある!」より

週刊新潮 2016年6月16日号掲載

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