時給120円? 最低賃金以下の手当で働く「共産党」の“赤”字事情

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“共産党のドン”こと不破哲三氏の出生地である東京・代々木の「共産党東京都委員会ビル」が、今年の4月に民間会社に売却されていた。地上9階、地下1階、80坪近い敷地に立ち、地元の不動産屋いわく〈土地は坪800万円から1000万円の値でもおかしくない。売却額は7、8億円くらいでは〉。さらに党の財政事情に注目してみれば、党員の涙ぐましい“奉公”があって――。

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志位和夫委員長 背に腹は代えられず?

 維新の党瓦解で共産党は野党第2党に躍り出た。10月25日の宮城県議選でも、同党は議席を4から8に伸ばし、中央でも地方でも、存在感を高めている。志位和夫委員長の鼻息は荒く、先頃ぶち上げた野党連立政権「国民連合政府」構想に、「SEALDs」の力も借り、「反安保法制」でさらに票を伸ばせると踏んでいる。

 だが、このように「外」に見せる党勢拡大に向けた強気の姿勢を、同党の元党員は鼻白んだ様子でこう突き放す。

「対外的に威勢の良さを保ち、共産党の体裁を取り繕うために、党員や専従職員が塗炭の苦しみを味わいつつ必死に財政面で支えていることを、党の幹部たちはどう考えているんでしょうか。気楽なものですね」

 昨年公表された共産党の最新の収支報告書を見ると、収入は236億円で、約10年前の300億円からかなり減っている。「単年収支」は1億5000万円のプラスと、辛うじて「黒字」を保っているものの、その前年は2億2000万円の「赤字」。しかも、これとて以下に紹介するように、党員や専従職員の赤貧を地で行く「下支え」があった上での数字なのだ。

「共産党の収入は、党員の実収入の1%と決められている党費、カンパ、赤旗の売り上げの3本柱で成り立っていますが、そもそも党員が減っている。昨年1月に公表された党員数は30万5000人で、過去最高だった1987年から約4割減。また、3本柱の中でもとりわけ重要視され、党の収入の8割を占める屋台骨の赤旗の部数は、日刊紙、日曜版あわせて80年に355万部だったのに対し、今は120万部程度に落ちています」(同)

 共産党の元ナンバー4で、政策委員長を務めた筆坂秀世元参院議員が、こう後を受ける。

「地方組織の専従職員が、年金などの社会保険料を納められていないとの話がよく中央委員会に上がってきていました」

 こういった惨状では、いくら幹部が党勢拡大のラッパを吹けど、「張りぼて」の感は否めまい。

■時給換算で120円

 続けて、西日本地域で暮らすある元専従職員がこんな苦労譚を披露する。

「赤旗配達のためにアルバイトを雇うのはもったいないと、専従職員の私たちが週5日、毎朝6時から、全長30キロにわたる広範囲で、2時間かけて赤旗を配らされていました。配達用のバイクは自前調達で、故障しても修理費用は保障してもらえない。そうまでして配っても、もらえる『配達援助金』、つまり配達労働の対価は1部につき8・3円。私は毎日、約30戸に配達していましたが、1日わずか240円にしかなりませんでした」

 この「手当て」を、時給に換算してみると120円となり、最低賃金どころの騒ぎではない。その上、給料の遅配、欠配も珍しくないという。

「当時、“アラサー”だった私の月給は手取りで15万円弱。それも、党の資金繰りが悪く、お盆と正月の年2回、半年ごとにまとめて支給される有様でした。実家住まいで、妻もパートをしていたため、何とか生活はできていましたが、私の働きぶり、いや働かされぶりを見て、家族は皆、共産党嫌いになりましたね」(同)

 それでも、専従職員の足元で共産党離れが起きているという皮肉に耐えながら、彼らは赤旗の部数拡大やカンパ募集に駆けずり回らなければならないのである。

 同党事情通が、その実態を紹介する。

「以前は、年に1カ月ほど、党勢拡大運動期間が設けられ、赤旗の部数を増やすことが課せられていたものの、一向に増えないのでその期間が延ばされ、例えば今年は6月10日から9月30日までが運動期間とされました。期間中は、上からの圧力もあって、何とか部数拡大に努めるのですが、期間が終わると同時にまた下がるので意味がありません。それも当然で、『ノルマ』をどうしても達成するために、『浮き部数』と言って、専従職員が自分で何部も赤旗を取ったりしているからです」

■「空白克服基金」「供託金基金」

 これでは、タコが自分の足を食っているようなものであろう。そして、カンパ集めにも同党の苦境が滲(にじ)み出ている。

「ある地域では、党員に配られる資金集め用の封筒に、『党費』の欄の他に『空白克服基金』や『供託金基金』という欄が設けられています。前者は共産党議員がいない空白議会をなくすための活動資金で、後者は、選挙であまりにも得票が少なかった場合に没収される供託金に備えたプール金です」(同)

 共産党は、端(はな)から落選、それもボロ負けを想定してカンパを募っているわけだ。これで、果たして党員の士気が上がるのだろうか。

 兎(と)にも角(かく)にも、同党はこれまで比例票の掘り起こしの意味もあって、全選挙区での候補者擁立を原則としてきた。結果、例えば05年の総選挙では223選挙区で供託金を没収され、その額は計6億6900万円にも達している。供託金基金を作らざるを得ないのも、むべなるかなである。

「特集 党勢拡大『国民連合政府』構想の花火の陰で 『共産党』が代々木の8億円不動産を売却していた」

週刊新潮 2015年11月19日号掲載

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