今年最良の1冊「BOOK OF THE YEAR 2013」ランキング第1位、話題の「十二国記」って?

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 12月6日発売の「ダ・ヴィンチ1月号」(KADOKAWA メディアファクトリー)で「記憶に残った今年最良の1冊 BOOK OF THE YEAR 2013」のランキングが発表されました。
 小説ランキング部門で1位を受賞したのは小野不由美さんの『丕緒(ひしょ)の鳥  十二国記』(新潮文庫)でした。『丕緒の鳥』は「十二国記」シリーズ12年ぶりとなる新作で、待ちわびた読者の大きな期待に応えての受賞です。
 初版30万部で刊行され話題を呼んだ、村上春樹『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』(文藝春秋)を抑えての受賞にも驚きです。「ダ・ヴィンチ1月号」では小野さんの今後に向けた抱負も掲載されています。

 しかし、そもそも「十二国記」って何?という方も多いのではないでしょうか。

■「十二国記」って?

「十二国記」は、ホラー・ファンタジーの名手として知られる小野不由美さんが1991年に発表した『魔性の子』から始まる異世界を舞台にした物語です。古代中国を彷彿とさせながらも、現実かと見まごうばかりに精緻に作りこまれた世界を舞台に描かれ、様々な立場の人物が己の置かれた状況に迷い奮闘し立ち向かう姿は、読者の心を深く揺り動かします。

 作家の辻真先さんは、「十二国記」をこのように評しています。

「異世界ファンタジーの多くは、疾走する英雄たちの威風に焦点を合わせ、その言行を歌い上げる。読者の胸はスカッとする。決して自分にできないことを、絵空事のヒーローがやってのけるからだ。ところが『十二国記』は、断固として民の視線にこだわり抜く。(中略)このシリーズが読者にもたらす興奮は、一過性のものではない。“決して自分にできないこと”ではなく、必ず“自分にだってできること”があると思い知る――自分を発見する喜びと表裏一体だから、読む者の心をいつまでも揺さぶりつづけるのだ。」

 シリーズは91年から8作が出版されましたが、今年7月に『丕緒の鳥』が刊行されるまで、12年間は新刊が中断していました。20年以上にわたって続くシリーズだけに、当時高校生だった読者はお母さんになり、今は中学生の娘といっしょに読んでいます、という声が聞こえてくるのもこのシリーズの特徴です。

■おじさんにも好評な『丕緒の鳥』

 シリーズのはじまりは、十代の主人公が苦難を乗り越える成長譚として若い読者を中心に広がりました。しかし、今回ランキング第1位となった『丕緒の鳥』は、一介の役人や、仕事に一途な職人や学者たちなど、市井で暮らす人々が己の役割を全うするための苦悩を描いた短編集となっています。寄せられた読者の声のなかには、

「自分も言葉無き民の一人として物語の世界に立っていた事に驚かされました」
「仕事を信じて生きる官達の、静かで過酷な闘い。やがて訪れる、一筋の希望。涙が止まらない」
「ヘタな人生相談より余程心にしみる」
「民のための、民あっての国です。政治家を生業にしてる方々にも是非読んで頂きたいものだ」

などなど、中高生から熟年世代まで、現実社会を戦う全ての人の心に響く一冊となっています。

 十代だった頃を思い出し、感慨にふけりながら読むこともできます。現実社会で足掻いてるサラリーマンが仕事に対する希望と勇気を見つけ出すこともできます。物語の中には読む者の心に響く言葉がたくさんあり、自分を重ねて考えることができます。また、精緻に構築された美しい世界を味わうのもいいでしょう。可愛いキャラクターに癒されるのもこのシリーズの特徴です。
 次巻『華胥(かしょ)の幽夢(ゆめ)』の発売(12月末)も控え、ますます人気が高まる「十二国記」シリーズ、年末年始の読書に、いかがでしょうか。

□小野不由美「十二国記」新潮社公式サイト

デイリー新潮編集部

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