「“お前もパンツ脱げ”と…」 長嶋茂雄さん、大学の後輩が明かす“特殊過ぎる”練習方法 「後輩にも“君付け”でイビリは絶対にしなかった」
“おまえもパンツ脱げ”
しかし、それからが本格的な素振りの猛練習となる。
「部屋で自分の世界に没頭するかのように集中してバットを振り続ける。一晩につき、約1時間、素振りの回数は1000回を超えたと思う。しかも一糸まとわぬ姿で急所は丸出し。長嶋さんの部屋の畳は見るも無残。広範囲にわたって擦り切れ、ところどころ、内側がむき出しになっていました」
諫山さんは、長嶋さんに素振りの指導を受けた。
「バットスイングのコツを教えてもらうため、長嶋さんの部屋を訪ねたら突然、“おまえもパンツ脱げ”と言われた。パンツを脱ぐ理由は、バットスイングする瞬間、腰と股の回転を見るためだそうです。スイングの習熟度のレベルが増すにつれ腰と股が連動し、長嶋さん独特の表現をするならば“ギューッ”と絞り込んでゆくような回転が身に付くようになるというのです」
天才長嶋さんならではの打撃理論である。打撃練習では、場外に130メートル級のホームランを飛ばしていたというから、今の大谷翔平並みだ。
うなりを上げるような送球
守備でも長嶋さんは強肩で鳴らした。当時の立教は、サード長嶋さん、ショートに同期の本屋敷錦吾(卒業後、阪急ブレーブスに入団)と鉄壁の三遊間を誇っていた。諫山さんが言う。
「私は外野のレフトを守っていた。守備位置に就く際、長嶋さんが私に“諌山君、ゴロは俺に任せろ。フライだけ君に任せる”と言われました。三遊間方向のすべてのゴロをさばきたかったのか、守備位置が異様なまでに深かった」
それだけゴロをさばきやすくなる半面、捕球してから一塁手までの送球距離が長くなる。
「打者走者を一塁でアウトにするためには、サードとショートは強肩でなくてはならない。長嶋さんも本屋敷さんも肩に自信があったがゆえ、深めの守備位置を取ったのです。レフト前のヒット性のゴロでさえ、長嶋さんや本屋敷さんが横っ飛びで好捕して、糸を引くような送球をしてアウトカウントを稼ぐ。ことに、長嶋さんの送球は目を見張るものがあった。投げた瞬間、ボールが“フェーッ”といった感じで、うなりを上げるように一直線にファーストミットへ吸い込まれていきました」
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