“名画座の閉館”相次ぐなか東京のど真ん中に「ミニシアター」が誕生 「岩波ホール」「ギンレイホール」の“遺伝子”を受け継ぐ

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ギンレイの“遺伝子”を受け継ぐミニシアター

「そうなんです。シアター1は67席予定で、新作ロードショー中心。シアター2は64席予定で、準新作、旧作中心。ともに、洋画邦画にはこだわりません」(藤永さん)

 いまの神保町に、新作ロードショーの映画館がオープンするというのも、驚きだ。以下、藤永さんに解説してもらおう。

「オープン当初は、特別企画を予定しているので、新旧を織り交ぜた特集になる予定です。スペースとしては、東京の名画座ファンでしたら、ラピュタ阿佐ヶ谷さん(48席)、シモキタ‐エキマエ‐シネマK2さん(71席)をご存じでしょう。だいたい、あれくらいの広さのシアターが2つあるミニシアターだとお考えいただいてよいと思います」

 そして大きな特徴が、ギンレイ名物だった年間パスポート、「サブスク」システムの導入だ。

「準新作・旧作が中心となるシアター2に、サブスク制を入れる予定です。年額2万2000円(税込)で、対象作品が観放題となります。1か月4~6本、年間50本程度の上映予定ですが、全部観ると1本あたりの料金は400円ちょっとになりますし、好きな映画を何回も観ていただけます。ただし、学生さんなどには高額だと思うので、その場合は、月単位で2500円(税込)のサブスク制もあります。チケットは、オンラインと窓口の両方で購入可能です」

 それにしても、「映画を年間50本も観るひとがいるのか」「今年は『国宝』1本で十分だよ」――との声が聞こえてきそうだが、50本どころか、年に数百本観る映画マニアなど、いくらでもいる。ラピュタ阿佐ヶ谷やシネマヴェーラ渋谷に行けば、1日で6本観ることができる。毎晩、国立映画アーカイブや新文芸坐に必ずいるファンも多い。彼らにとっては、年間50本など屁でもないのだ(ちなみに筆者は、ここ数年は年間200本前後。配信や試写会も入れると250本くらいか)。

「ただし、上映はデジタルのみで、フィルム上映には対応していません。よって、デジタル化されていない古い日本映画などは、残念ながら、かけられないので、それはぜひ、ご近所の神保町シアターさんでご覧いただきたいと思います。そのかわり、レーザー2K上映で、メインスピーカーはメイヤー・サウンド、エレクトロ・ヴォイスを導入予定で、音には十分こだわります」

 かように、新生「シネマリス」は、ギンレイの“遺伝子”を受け継いでいるのである。だが、もうひとつ、稲田さんや藤永さんが思いを寄せるのが、2022年7月に閉館した、神保町カルチャーの代名詞とでもいうべき、「岩波ホール」だった。

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