吉村知事語る「なぜ西浦モデルを誰も批判しないのか」 “42万人死亡”検証の必要性問う
緊急事態宣言を発令した4月7日、安倍総理は、「専門家の試算では、私たち全員が努力を重ね、人と人との接触機会を最低7割、極力8割削減することができれば、2週間後には感染者の増加をピークアウトさせ、減少に転じさせることができる」と説いた。
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くだんの「試算」をした「専門家」とは、厚生労働省クラスター対策班の中心人物で、政府の専門家会議にも参加する北海道大学の西浦博教授である。
もっとも、安倍総理のこの発言は、すぐに西浦教授自身から「7割は政治側が勝手に言っていること」と突っ込みが入り、以後メディアでも「8割削減」が感染を抑えるために必須の数字として、繰り返し説かれた。そこにさらに畳みかけたのも西浦教授だった。いわく、接触を減らすなどの対策をまったくとらなければ、国内で約85万人が重症化し、うち約42万人が死亡する恐れがある。
西浦教授の試算は基本再生産数、すなわち1人の感染者が生み出した2次感染者数の平均値を2・5として計算していた。だが、これはドイツにおける数値なので、日本でも欧米並みに感染が拡大する、という前提ありきの試算ということになる。それに42万人云々も、「対策をまったくとらなければ」という、ありえない前提に立っていた。
そんな試算に乗っかった政府もお粗末だが、いまなお政府の専門家会議からは、西浦モデルへの批判は聞こえてこない。当事者が自らの非を認めて反省することの難しさを物語っていると言えようか。
一方、その点で自由なのが、大阪府の吉村洋文知事(45)である。6月16日、週刊新潮の問いにこう答えた。
「西浦先生は、これまで昼夜違わずに役所に張り詰め、感染症をなんとか抑えようと、国民を守るために、蓄積した専門的な知見を提示してくださった。そのことに僕自身、敬意を表しています。そこは間違いのないようにしなければいけないし、批判をすることはありません。実際、感染拡大時には、冷静な分析はなかなか難しい。4月に第1波がきた時点では、東京も大阪も医療体制が厳しい状況でした。そのうえニューヨークやヨーロッパでは、道路に死体置き場が作られているような状況を目の当たりにしながら対策を進めていた。そういう意味では、緊急事態宣言を発令し、全国で休業要請して、なんとか抑え込もうとした政策自体は、僕は正しかったと思っています」
まずはそう前置きしたうえで、こう話を継いだ。
「ただ、それを振り返って事後的に冷静に検証するのは、別の議論だと思っています。というのも、きちんと事後検証しておかないと、第2波がきたとき、また同じことをすることになってしまう。しかし、それが本当に正しいのか、よく検証しなければいけません」
むろん、西浦モデルにもとづく政策によるダメージが大きすぎたからである。
「これまで国民のみなさんには、(生活に必要な)買い物以外では外出を控え、家にいるようにお願いしてきましたが、それによって生じた経済、さらには社会全体に与えるダメージ、犠牲、副作用がすごい。大都市では生活保護申請が対前年比で30~40%増え、休業されている方は400万人増えたといい、失業率も2%程度だったのが4%程度に上がりかねないという。失業率が2%増えると、あってはなりませんが、自殺者が2千人ほど増えるという試算もあり、そちらの命も守らなければいけない。つまり“ステイホーム”は、社会、経済への大変なダメージにつながり、それに伴って失われる命もあるのだと、意識しなければいけません。だから僕は、第1波の際の政策をきちんと検証しようという考え方なのです。すでに行った“みんな抑え込もう”という選択肢しかないなら、第2波がきてもそうしますが、それ以外の選択肢があるのであれば、きちんと検証すべきだと思うのです」
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