実年齢より老けて見える人の特徴は? がん、認知症の起点になるメタボを防ぐ方法
「寄る年波には勝てない」と諦めていたらますます老け込む。老化を遅らせるには「心持ち」が大切だと語る慶應義塾大学の伊藤裕教授は、「臓器の時間」という考え方も提唱している。それがゆっくり進むほど長寿につながると言うが、中でも重要なのが腎臓と腸で……。【伊藤 裕/慶應義塾大学医学部教授】
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【写真を見る】「メタボリック・ドミノ」を世界で初めて提唱した伊藤裕教授
メタボリックシンドロームの大きな原因というのは、内臓脂肪の増加、要するに肥満です。そのため以前は、肥満の解消こそ一番のメタボ予防と考えられていました。しかし現在は、少し考え方が変わってきました。慶應義塾大学の百寿総合研究センターで、100歳以上の方がどんな病気にかかっているのか調べると、85歳以上になってから高血圧などになった、という人が多かった。つまり、100歳を超えるような人は、なかなか生活習慣病にならない、というわけです。
〈そう語るのは、慶應大学医学部教授で百寿総合研究センター副センター長の伊藤裕氏。伊藤氏は、生活習慣病がドミノ倒しのように進み、やがて重大な病態を引き起こす「メタボリック・ドミノ」という概念を世界で初めて提唱したことでも知られている。〉
メジャーながんの多くの起点がメタボ
メタボリック・ドミノの起点となるメタボリックシンドロームは、代謝能力が落ち、供給される栄養がうまく利用できず、ダブついている状態。メタボによる代表的な弊害として、高血圧や糖尿病などの生活習慣病があり、メタボリックシンドロームという言葉ができた当初は「成人病」と言われていました。その時はまだがんなどは別の病気として分けて考えられていましたが、その後、メタボの人が増えるにつれて、主に消化・吸収に関わる部位のがん患者も比例するように増えていきました。胃がん、大腸がん、すい臓がん、腎臓がんなどです。そうしたことから、実はがんとメタボは関係があるのではないか、と考えられるようになったのです。小児がんなどの特殊なものを除けば、今ではメジャーながんの多くが、メタボを起点としたドミノの牌の一つであることが分かってきました。認知症も同様です。昔はメタボと関連付けて考えられることはありませんでしたが、結局、根本をたどると、メタボで血管や神経の代謝が悪くなっているのが原因であることが分かってきています。
先ほど、100歳を超えるような人は生活習慣病になかなかならない、と言いました。それはつまり、メタボリック・ドミノの最初の牌である代謝機能の低下が非常に遅い、ということ。逆に言えば、体の中の代謝機能が落ちない人、落ちにくい人ほど長生きする、ということなのです。太っている=メタボではない。うまく体の中でエネルギーが使われているかどうかがメタボを避ける上で最も大切なことだったのです。
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