脳は“加齢で衰える一方”ではない? 「三日坊主も悪くない」高齢者でもできる“脳の鍛え方”を伝授

ドクター新潮 ライフ

  • ブックマーク

 何事も体が資本。蓋(けだ)し至言である。だが、そこにもう一要素足すことができなければ、人生100年時代を無事過ごすことはできない。何事も頭が資本――。超高齢社会を生き抜くための「生涯健康脳」の鍛え方とは。16万人の脳MRI画像を診てきた専門家が伝授する。【瀧 靖之/東北大学加齢医学研究所教授】

 ***

「どうせ三日坊主になるに決まっている」

 人生経験を積んだ高齢者になればなるほど、心身の衰えも相まって、自分自身のことをそう諦めがちです。

「今から新しい何かを始めたところで、続けられずにまたすぐやめてしまうのは目に見えている……」

 しかし、脳研究の専門家である私からすると、このマイナス思考は間違っていると断言できます。

 三日坊主でいいのです。それが人間として普通のことなのです。そして、三日坊主は後になって必ず役に立つ時が来ます。なぜなら、脳には「可塑性(かそせい)」があるからです。

“三日坊主”は黒歴史ではない

 以前は、脳は一度形や大きさが完成すると、以降は加齢に伴い衰えていくだけと思われていました。しかし、近年英科学誌「ネイチャー」に掲載された研究報告等によって、そうではないことが分かってきています。

 脳は何歳になっても神経細胞同士をつなぐ回路を変化させ、機能を高めることが可能なのです。とりわけ記憶を司(つかさど)る海馬にいたっては、その中で神経細胞そのものが新しく生み出されることがある。外部からの刺激などで脳の体積や回路が変化することを「脳の可塑性」、海馬で起きる現象を「神経新生」と言います。

 したがって三日坊主は、その人が先天的に「努力できない脳」の持ち主だからなおらないという話ではない。後天的な工夫やトレーニング次第で「脱・三日坊主」はできる。つまり、私たちは何歳になっても新たにチャレンジし、学び、知識や技術を身に付けていくことが可能なのです。

 実はその時、たとえ三日坊主であったとしても過去に取り組んだことがあるという経験そのものが、新たな学びへの大きな助けとなります。すなわち、三日坊主は決してチャレンジに失敗した「黒歴史」などではなく、新しい挑戦をするにあたっての、脳にとっては大きな財産といえるのです。

〈と、新たな試みに尻込みしがちな高齢者を勇気づけてくれるのは、東北大学加齢医学研究所の瀧靖之教授だ。これまで16万人にもおよぶ脳のMRI画像を読影、解析してきた「脳診断」のプロである。〉

次ページ:脳の機能には可塑性がある

前へ 1 2 3 4 5 次へ

[1/5ページ]