白内障手術で「認知症発症リスク」は30%低減 50代で2人に1人、80代でほぼ全員が発症

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手術は20分程度で終了

 こうした事態を招く白内障の治療法は、先ほど申し上げたように手術以外にありません。水晶体の濁りは9割以上が加齢に伴うものであり、どうやっても年齢を重ねることによる濁りを防ぐことはできず、レンズを替える以外にないのです。

 水晶体は加齢とともに徐々に濁っていきます。つまり、白内障はごく自然な老化現象であり、淡々と受け入れることもひとつの選択肢ではあるでしょう。しかし、これまで説明してきたように、手術をすることでさまざまなメリットが得られるのも事実です。

「眼球の手術」と聞くと恐ろしく感じられるかもしれませんが、点眼などの局部麻酔で身体への負担も少なく、20分程度で終了し、現在、日本では年間約160万件の白内障手術が行われています。少なくとも、眼球の手術だからといって、過度に、そして無闇に恐れる必要はありません。

 しかもこの1~2年で、眼内レンズの種類が増え、とりわけ「多焦点レンズ」が改良されています。これは、眼鏡でいう「遠近両用」をイメージしてもらえればいいと思いますが、最近では「遠中近3焦点」のレンズも出てきています。

 加えて、多焦点レンズは混合診療が可能となりました。それまでは、多焦点レンズを選ぶと手術代、レンズ代ともに自己負担でしたが、一昨年4月から、多焦点レンズを選んでも手術代には保険が適用され、単焦点レンズとの差額と、若干の追加検査費用を自己負担するだけでいいことになった。この制度変更はあまり知られていませんが、非常にお得だと思います。

片目で見る

 こうして、バリエーションが増えている手術を選択するか否かを判断するには、どれだけ白内障の症状が進行しているかが大きなポイントになってきます。しかし、老化現象のひとつである白内障による見えづらさに関しては、それが水晶体が弾力性を失うことによるいわゆる老眼のせいなのか、あるいは緑内障によるものなのか、その違いを患者さんご自身で確かめることは難しい。

 したがって、セルフチェックとしては「一般的な目の不調」を気に掛けるしかないのですが、その具体的な方法としては「片目で見る」ことがあげられます。日頃よく使う「利き目」が問題なく見えていると、もう片方の目が見えにくくなっていることに気付かないケースが意外と多いのです。とりわけ男性は気が付きにくい。というのも、女性はお化粧でアイラインを塗る時などに片目で見る機会が日常的にあるのに対して、男性は意識をしなければ片目で見る場面がない。その上で、見え方に異常を感じた場合は、眼科を受診することが大事なのは言うまでもありません。

 加齢による白内障は、白髪になるのを防ぐことができないのと同じように、予防法はほとんどありません。一方で白髪と違うのは、QOLの低下をもたらす危険性がある点です。したがって、認知症発症リスクを下げることが分かった今回の調査結果も踏まえ、手術するか否か、「正しく恐れる」必要があると思います。

大鹿哲郎(おおしかてつろう)
日本眼科学会理事長・筑波大学教授。1985年、東京大学医学部卒業。東京厚生年金病院眼科、同大助教授等を経て筑波大学教授に。白内障手術の名医として知られ、『目の病気がよくわかる本』などを監修。NHKをはじめテレビ番組にも多く出演している。

週刊新潮 2022年4月14日号掲載

特別読物「米国の最新論文で明らかに 目の老化『白内障』の手術で『認知症発症リスク』は30%低減」より

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