白内障手術で「認知症発症リスク」は30%低減 50代で2人に1人、80代でほぼ全員が発症

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緑内障手術と認知症発症リスクの間に相関関係が見られず

 今回の研究結果で、もうひとつ興味深いのは、緑内障手術と認知症発症リスクの間には、相関関係が見られなかったことです。眼圧の上昇によって起こる緑内障の手術は、眼圧を下げることで「視力をそれ以上悪くしない」ためのものです。他方、白内障の手術は濁ったレンズを主にアクリル製の柔らかな新しいレンズに替えることで「視力を良くする」ためのもの。この違いから、緑内障の進行を止めても、白内障と異なり、認知症の発症リスク軽減につながらなかったということなのではないでしょうか。

 これまで見てきたように、白内障手術と認知症の関係という新たな研究結果が出てきたわけですが、認知症まで至らなくても、白内障によるQOLの低下は、かねて指摘されてきたところです。

 具体的には、白内障になって視力が低下し続けることにより眼鏡がどんどん合わなくなっていくことがあげられます。眼鏡を替えても、すぐに度数が合わなくなる。その度に新調するのも大変ですし、お金もかかります。したがって、合わない眼鏡をかけ続け、イライラが募ったり、「見えにくい世界」で暮らし続ける弊害が起こるのです。

負のスパイラル

 また、物がダブって見える方も多い。かすむのではなく、物が2重、3重に見えるのです。白内障になると、視力が1.0あってもダブって見えるケースがある。そうなると、やはり「見えにくい世界」で生活しなければなりません。

 さらに、家の中にいる分には問題ないものの、遠くがかすんで見えるため運転しづらいと訴える方もいます。特に、目に入った光が焦点をひとつに結ばず反射するので、夜間の対向車のヘッドライトが怖くて運転できなくなる。都心であればともかく、地方では車を運転できなくなるのは行動範囲を著しく狭めることになります。

 このように、白内障による目の不調で、単に物が見えにくいという現象にとどまらず、ひとりで外出すると人に迷惑をかけてしまったり、あいさつをされても気付かずに失礼してしまうといったことが気になり、「引きこもり」を誘発しかねません。そうなると、活動量が減って認知機能の低下を招き、より活動量が減って……という負のスパイラルに陥ってしまう人もいるのです。

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