白内障手術で「認知症発症リスク」は30%低減 50代で2人に1人、80代でほぼ全員が発症

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 誰もが避けられない老化に伴う目のかすみ。“自然現象”であるがゆえになすがままという方も少なくない。だが、対処すればQOL(生活の質)改善が期待できると聞けばどうか。最新論文で判明した「白内障手術と認知症発症リスク」の関係を斯界の権威が解説する。

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 今回の調査結果は、「目の老化」とでもいうべき白内障の治療において画期的な意味を持つものだと思います。

 白内障の治療、すなわち手術を受けることによって、「認知機能の改善」あるいは「認知機能低下の歯止め」にとどまらず、「認知症発症リスク」が下げられることが明らかになったからです。発症すると完治することはなく、治療法そのものが確立されていない認知症。しかし今回の調査結果で、そもそも認知症になることを防ぐ「認知症予防」の効果が、白内障の手術にあることが分かったわけです。

〈こう解説するのは、日本眼科学会の理事長で筑波大学教授の大鹿哲郎氏だ。

 白内障手術の名医として知られる大鹿教授は、自身でも「白内障治療と認知機能の関係」を調査・研究し、その結果を発表してきた。そんな大鹿教授が「画期的」と評する「今回の調査結果」。超高齢社会を迎え、いずれ誰もが発症し得るという意味で認知症が「国民病」になりつつある現代日本において、その予防法が分かったとなれば注目せざるを得ない。

 また3月27日付の日経新聞は、2019年12月と翌20年5月を比較すると、65歳以上の白内障患者の受診が22%減ったと報じた。コロナ禍による「受診控え」が深刻化しつつあり、白内障も例外ではないというのである。

 それでは、「画期的な調査結果」を紹介する前に、白内障について簡単におさらいしておこう。〉

80歳以上だとほぼ全員が白内障

 目でとらえた光を網膜に集め、その情報を視神経を通じて脳に送る。それを脳が認識する。こうして、私たちの「見る」という行為は成り立っています。

 まず「目の入り口」である角膜で光を屈折させて取り込み、次に水晶体が厚みを変化させることで焦点距離を調整して、網膜にひとつの像を浮かび上がらせる。つまりカメラで例えると、角膜と水晶体はセットでレンズの役割を果たしているといえます。

 本来、水晶体は透明なのですが、加齢に伴ってたんぱく質が変性し、だんだんと濁っていく。透明だった水晶体が濁っていくと、外からの光を充分に取り込めなくなったり、光が散乱して網膜にうまく像を結ばなくなる。その結果、物がぼやけたり、かすんで見える。これが白内障です(イラスト参照)。

「白内障診療ガイドライン」によると、軽度のものを含めれば50代で2人に1人、60代で3人に2人、70代で5人に4人、そして80歳以上だとほぼ全員が白内障になります。

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