地球温暖化で欧州は逆に寒冷化する…冗談のような話の科学的根拠は

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2021年09月02日

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映画「デイ・アフター・トゥモロー」でビジュアル化

 デンマーク・コペンハーゲン大学の研究チームもまた、3月上旬、「熱塩循環は近年加速している融氷現象のせいで停滞または停止する恐れがある」と警告を発した。

 熱塩循環の勢いは海水の塩分濃度の影響を受ける。塩分濃度が高いと海水は容易に沈み込むが、塩分濃度が低下すると沈み込みの力が弱くなる。現在、グリーンランドの氷河などが継続的に融解していることから、表層の海水に流入する真水の量が増加し続けている。そのため、この海域の海水の塩分濃度が下がり、沈み込むことができなくなっており、熱塩循環全体に悪影響を及ぼしかねない状況となっているのだ。

 しかし、国連の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」は、熱塩循環が今世紀末までに停滞する可能性があることは認めているものの、「その停止はあり得ない」としている。

 一方、前述のポツダム研究所は8月5日にも、「熱塩循環が重大な転換点にさしかかっている」とする内容の論文を出した。「北極周辺で融解した氷(真水)が限界を超える量で大西洋に流れ込んでおり、このままでは熱塩循環は不安定化する可能性がある」とした上で、「熱塩循環が停滞すれば、欧州では北に行くほど気温低下が激しくなる」と、IPCCに比べてはるかに悲観的である。

 こうした熱塩循環の停滞の危機をビジュアル化したのは、2004年に公開された映画「デイ・アフター・トゥモロー」である。映画では熱塩循環が完全に停止したことでほぼ一夜にして氷河期が始まる。寒冷化の速度や気温低下の激しさはかなり誇張されているが、これまで説明してきたように、熱塩循環のメカニズム自体は科学的に証明されている。これを受けてというわけではないだろうが、2005年には、「数十年後に欧州地域の平均気温が4度低下する恐れがある」との予測も出たほどだ。

 2000年から19年にかけての地球の平均気温と超過死亡の関係を調査した結果によれば、全世界で毎年508万人の超過死亡者が出ており、このうち寒さによる死者数は459万人と全体の9割以上を占めている(8月20日付JBpress)。つまり、温暖化以上に寒冷化の方が私たちに深刻な被害をもたらす、と言えるのだ。

 いずれにせよ、日本を始め世界各国は温室効果ガスの排出量削減だけでは食い止められない気候変動に備えて、抜本的な対策を講じる必要があることだけは間違いない。

藤和彦
経済産業研究所コンサルティングフェロー。経歴は1960年名古屋生まれ、1984年通商産業省(現・経済産業省)入省、2003年から内閣官房に出向(内閣情報調査室内閣情報分析官)。

デイリー新潮取材班編集

2021年9月2日掲載

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