地球温暖化で欧州は逆に寒冷化する…冗談のような話の科学的根拠は

ビジネス IT・科学 2021年09月02日

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400年に1度の現象

「気候変動の影響のため、欧州では豪雨災害が発生する確率が最大で9倍に上昇した」

 気候変動の影響を分析する国際プロジェクト「世界気象アトリビューション(WWA)」は8月24日、7月中旬に発生した欧州中部の豪雨災害に関する調査結果を公表した。

 7月12~15日にかけて、ドイツやベルギーなどの地域で発生した洪水により複数の町や村が水没し、少なくとも220人が死亡した。WWAによれば、(1)今回の集中豪雨は400年に1度の現象だったこと、(2)1日の雨量は気候変動の影響で最大19%増加していたこと、が明らかになったという。

 もちろん、400年に1度という頻度は、「今後400年は同じようなことが起きない」ということを意味するものではない。気候変動は年々深刻化しているため、異常気象のリスクは年を追う毎に増大することが懸念されている。

 国連によれば、昨年の暴風雨による被害額は920億ドルとなり、2000年から19年にかけての平均を3割上回った。洪水による被害額は510億ドルとなり、平均の5割増になったという。

 これまで水害には縁遠いとされてきた欧州でも深刻な洪水被害が発生したことから、「地球上に安全な場所はなくなった」とさえ、言われ始めている。

 さらに、米気象学会でも25日、「昨年の欧州の気温が観測史上最高を記録した」と発表された。こうしたことから、地球温暖化問題を主導してきた欧州では、「防止のための取り組みは待ったなし」との論調が高まるばかりだが、意外な予測にも注目が集まりつつある。

アマゾン川100本分に匹敵

 その予測とは、「地球温暖化により欧州地域は逆に寒冷化する」というものだ。冗談のような話だが、しっかりとした科学的根拠がある。

 欧州地域が比較的高緯度に位置しながら、温暖な気候に恵まれているのは大西洋の海流のおかげだ。しかし、この海流が弱まっており、このままの状態が続けば欧州は寒冷化する可能性があるというのだ。

 大西洋の海流とは「大西洋南北熱塩循環(熱塩循環)」のこと。科学者はこの循環をコンベアベルトにたとえている。熱帯で発生した温かい海水が英国周辺の海域に到達すると冷やされ、ラブラドル海やノルディック海(グリーンランド海、アイスランド海、ノルウエー海の総称)の底に沈み込む。この冷えた海水はUターンを始め、海底を蛇行して南下し、赤道に至る。循環のサイクルは約1000年、熱塩循環が運ぶ流量は、アマゾン川100本分に匹敵すると言われている。

 だが、この熱塩循環が弱まると、熱帯の温かい海水が北上できなくなることから、北大西洋の海水は冷たいままになってしまう。熱塩循環が欧州の快適な気候に不可欠であるにもかかわらず、気候変動のせいで停滞し始めていることが、各種の研究によって明らかになりつつある。

 ドイツのポツダム気候影響研究所(ポツダム研究所)は今年2月下旬、「熱塩循環がここ数十年で最も弱い状態になっている」と、論文を公表した。熱塩循環は小氷期が終わった1850年以降、150年間にわたり徐々に弱まっており、近年そのスピードが増しているという。なぜだろうか。

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