法廷で「よっしゃー!」と喜んだ「アポ電」強盗犯 裁判官が見誤った“酌むべき事情”

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世間を震撼させた「アポ電強盗」

 法廷で遺族感情を逆撫でするような態度を見せた被告の名は、須江拓貴(24)。まずは彼が犯した罪を振り返りたい。

 事件が起きたのは、2019年2月28日午前11時頃。須江被告は、小松園竜飛(29)、酒井佑太(24)の両被告と3人で、加藤邦子さん(当時・80)が一人暮らしをしていた東京都江東区のマンションを、宅配業者を装い訪問した。そして加藤さんの手足をラップフィルムなどで緊縛し、口を粘着テープで塞いで抵抗させない状態にして、室内の金品を強奪しようとしたのだ。

 加藤さん宅に押し入る10日ほど前に、彼らとは別の詐欺グループが、加藤さん宅に家族を装い「家に金はあるか」と確認する電話を入れていた。彼らはその情報を元に押し入ったのだが、結局、何も探し出せずに退散したばかりか、加藤さんを死なせてしまったのである。

他にも数々の凶悪事件を起こしていた3人

 現場付近の防犯カメラから、逃走に利用した車がすぐに割り出され、事件発生から半月後の3月13日、3人は逮捕された。逮捕後、彼らがSNSなどで知り合った他の詐欺グループメンバーらと組んで、なりすまし詐欺や凶悪な強盗を繰り返していたことも判明した。判決で犯罪事実として認定された余罪を列記する。

●2018年10月 警察官になりすまして電話した後で、神奈川県横浜市の当時57歳の女性宅を訪問。キャッシュカードをだまし取り、現金約136万円を窃取(酒井被告と他のメンバー)

●2018年11月 大阪市の路上で、当時47歳の男性に暴行を加え、財布の入ったカバン(時価合計15万円相当)を強奪(酒井被告と他のメンバー)

●2019年1月 東京都中央区日本橋の会社事務所に空き巣に入り、金庫等(時価合計3万円相当)を盗む(須江、小松園の2被告と他のメンバー)

●2019年1月 埼玉県越谷市で、不正入手した女性のキャッシュカードで金を引き出そうとするも未遂に終わる(須江被告と他のメンバー)

●2019年2月 警察官を装い、東京都渋谷区笹塚の老夫婦の家に侵入し、手足を縛ったうえで暴行を加え、現金400万円ほか定期預金証書等、時価合計123万円の金品を強奪(須江、小松園の2被告と他のメンバー)

●2019年2月 長野県佐久市のブランドショップに空き巣に入り、財布など35点(販売価格合計230万円相当)を盗む(須江、小松園、酒井の3被告)

 最後のブランドショップの空き巣事件は、加藤さん宅にアポ電強盗に押し入った同日の出来事だ。彼らは深夜2時過ぎに長野で空き巣に入った足で、東京に向かい、次の事件を起こしたのである。

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