片寄に贈る「若いときこそ全力万歳!」
片寄涼太(GENERATIONS from EXILE TRIBE)×作詞家・小竹正人 往復書簡 エンタメ 芸能 2021年1月3日掲載
片寄涼太(GENERATIONS from EXILE TRIBE)×作詞家・小竹正人 往復書簡24
新年を迎え、小竹はこんな風に綴る。「過去の自分が今の自分を作り、今の自分が未来の自分を作る」――。
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拝啓 片寄涼太様
年が明けましたね。と言っても、私がこの手紙を書いているのは2020年のクリスマスイヴです。よって、今回の手紙は私からの年賀状だと思ってください(ほら、年賀状も年が明ける前に書いて出すじゃん)。
この往復書簡、本当に奇妙かつ絶妙なタイミングで始まったと私も思う。
最初に君にこの企画を提案したのが2019年の初夏で(例の和食屋で夕飯を食べながら)、実際に私と君がパイロット版の手紙を書き合ったのがその数か月後。
その頃はまだ「コロナウイルス」なんて言葉自体も聞いたことがなかったが、あっという間にそれは世界中を震撼させて、すでに1年が経とうとしているのにいまだに猛威を振るっている。
公私共に案外頻繁に会っていた君にも全然会えなくなった。
一昨年から今年にかけて君とはこの往復書簡やら次回のシネマファイターズプロジェクト(文末の私のプロフィールをご覧ください)やらで今まで以上にワクワクすることをやっているのに、数々の打ち合わせは全てリモートで、画面越し以外では去年の春以降1度も君に会っていなかった。年末にようやく会えたが。
もともと私は全然アクティヴではないので(知ってるか)、読むものや見るものさえあればひとところにずーっといることが全く苦ではない。
よほどの用事がない限り自分から誰かに連絡することはないし、外出もできることならしたくないたちだ(特に夜は)。
だから、コロナウイルス蔓延前と後で生活形式にさほど違いはない。けれど、こんなにも長い期間日常の自由が制限されたことって人生においてなかったから、「何にも気にしないで涼太と久しぶりに美味しいものでも食べに行ってあれやこれや喋り倒したいなあ」などとあまり私らしくないことを思って胸がモヤっとするのも事実。
当たり前が当たり前じゃなくなってしまったからこそ私にとってもこの連載は拠り所のひとつみたいになっている。
なんか、会えない恋人へのラブレターのようになってきたので、君の前回の手紙の内容へと話題を変えよう(先ほど、作家・吉田修一氏の大傑作「湖の女たち」を読了したばかりで、内容に感化されまくった私は、それこそ湖の底に沈んでしまったかのような気分になっているんです)。
いろんな仕事に忙殺されている時期が私にもあった。年間数十曲の作詞、小説やエッセイやコメントの執筆、ガールズグループの教育係などを掛け持ちして、心身共に休まる時間がないのに毎晩のように深酒。
当時の私はもう40歳になっていたのにもかかわらず、君の言うところの「ペース配分」を全く考慮しておらず、何から何まで全力で立ち向かっていたから、円形脱毛症になったり顔面神経麻痺に悩まされたり。あの頃に「人って絶対に休息が必要」ということを知った。
ただし、あれを経験したからこそ学べた忍耐力や集中力が今も私の中に根付いているし、胸を張って「頑張った!」と言える達成感もあったのも確か。
何度でも言うし、同じようなことを歌詞にも書きまくってきたが、「過去の自分が今の自分を作り、今の自分が未来の自分を作る」のである。
これから君が何かの問題に直面したとき、その解決策のヒントはきっと過去の自分の中にある。
そして、新しい何かに挑戦したくなったときの然るべき手段を今の自分がすでに知っていたりする。
今日の喜怒哀楽の全てが明日の血となり肉となる。だから若いときこそ全力万歳!(もちろん心身を病まぬよう「ペース配分」を考慮してね)
これに気づいた、というか身をもって確信したときに私は、すでに人生の折り返し地点付近にきていた。ああ、もっと早く気づいていればよかった。
そしたら、あんな過去やこんな過去をもっと有効活用できていたのに。でもまあ気づけただけいいや。
今は年齢も年齢だし、功績という名の輝かしい爪痕は残せていないとしても、薄~い引っ掻き傷くらいは残せた気もするので、仕事量をある程度セーブさせてもらっている。仕事以外にも時間を割きたい大切なこともあるし。
まあ、私の場合、エネルギーのさじ加減を会得する前に、寄る年波と共にエネルギーが減少傾向にあるってのがホントのとこかもしれないが。
ちなみに私の2020年は、長年に渡る物書きとしての産物をたくさん受け取ったありがたい年だった。
この連載もそうだし、処女小説の映画化もそうだし。本業でも、君を始めとする数々の若いアーティストに数多の作詞をやらせてもらえたしね。
プライベートでは子育ての疑似体験をかなり本気でさせてもらい、「私ってこんなにも情が深かったのか!!」と目から鱗がボロボロボローと、どこか恥ずかしくもなってしまった1年だった。
恐ろしいウイルスと常に隣り合わせで思いも寄らぬ世の中になったからこそ、今まで見逃していた幸せもたくさん見つけられた、そんな2020年が終わった。
新しい年、2021年には、世界的な不穏が絶対に収束してほしいと、どうにもこうにも切に願う。
小竹正人
敬具