「ファミレスで割り勘なんて」 婚活中の女性たちがもらした本音

石神賢介 57歳からの婚活リアルレポート ライフ 2020年11月21日掲載

  • ブックマーク

 本来、恋愛も婚活も悪いことでは全くないのだから、こっそりやる必要はない。というのは正論ではあるが、何となく知り合いには隠しておきたいというのも人情だろう。特に年齢を重ねた人は「いい年して」と言われまいかと心配になるかもしれない。再婚を目指して57歳からの婚活に勤しむフリーライターの石神賢介氏は、「活動中」にまさに心配していた知り合いとの遭遇を果たすことになった。ある意味、同じゴールを目指す戦友同士はどのような会話を繰り広げたか……。

(文中の紹介文、登場人物はプライバシー保護の観点から一部を変更してあります)

 ***

 婚活には誰もが覚悟をしておかなくてはならないリスクがある。それは婚活ツールで、実生活の知り合いと出会ってしまうことだ。このリスクはどの婚活ツールにもあるが、ネット婚活や結婚相談所のサイトで登録者数が多ければ多いほど危険度は高い。

 僕自身、結婚相談所のホームページで、登録女性のプロフィールリストで2人、知り合いを発見してしまった。一人は仕事のクライアントのスタッフ、シノハラさん(仮名)。もう一人は異業種の知人、ヤマシタさん(仮名)だ。彼女たちの実年齢を僕は相談所のプロフィールで初めて知った。51歳と52歳だ。

 最初は狼狽した。バレたか……。こちらが見つけたということは、彼女たちも僕に気づいていると考えたほうが自然だ。しかし、よく考えてみると、こちらも恥ずかしいけれど、あちらも恥ずかしいはず。イーブンの関係だ。どうせごましはきかない。

 もしも出会ったらその時はその時、開き直って情報交換をしたほうが賢いというくらいに思っていたら……。

1円単位まで割り勘にする男、最初のデートでファミレスを選ぶ男

「イシガミさん、ちょっといいですか?」

 仕事で出入りしているクライアント企業で、背後から声をかけられた。ふり向くと、シノハラさんだった。同じ結婚相談所に登録していたので、女性会員のプロフィールで見つけていた。

 プロフィールによると、シノハラさんは51歳。離婚歴が一つある。20年ほど前に知り合ったころはふっくらとした女性だったが、節制をしたのだろう。顔も体形もいまはかなりすっきりとした。

「あっ、こんにちは」

 挨拶をして、彼女の表情をさぐる。

 仕事のことか? 婚活のほうか? 彼女と組んで進行中の仕事はいまない。

「イシガミさん、私と同じところに登録してますよね? プロフィールを見つけました」

 案の定、結婚相談所の件だった。

「はい。僕のこと、やっぱり見つけちゃいました?」

「もちろん。で、どんな状況ですか?」

 僕は自分の苦戦を正直に話す。

「シノハラさんは、すでにお見合いをされましたか?」

 その質問に、彼女の表情がにわかに厳しくなった。

「してます。頭にくることばかりです!」

 すでに何人かとお見合いを経験しているらしいが、ケチな男が多いのだという。登録しているB社では、最初のお見合いは男性が全額負担するルールになっている。ただし、お茶のみ。食事やアルコールをオーダーしてはいけない。男女とも相手を気に入り、最長3カ月間の交際期に入ってからは、性的な関係にならなければ、デートも飲食も本人たちの自由だ。その時点で、割り勘にする男が多いらしい。

「均等割りですか?」

 一応確認してみる。

「そうです。1円単位まで割ろうとする人もいました。どう思います?」

「まずは相手に好かれないといけないので、僕は割り勘にはしていません」

「でしょ!」

 初めての食事でファミレスに連れて行かれたこともあったという。シノハラさんは、収入に恵まれてきた人だ。食事も、ファッションも、上質なものを経験してきた。僕のようなフリーランスの記者と比べると、明らかに経済環境はいい。だからよけいにファミレスは大変な屈辱だったらしい。

「僕は近所のファミレスで1週間に3回は朝定食を食べていますが、シノハラさんはファミレス、ふだんはあまり行かれませんよね? 新鮮な体験だった……とはなりませんか?」

 という僕の質問には耳を貸さず、逆に聞いてきた。

「ファミレスにもある程度きちんとした食事を提供するチェーンと、とにかく安いところがあること、知ってましたか?」

「はい。僕はよく知っています。ヘビーユーザーですから」

「私がアテンドされたお店は、パスタが500円くらいで、グラスワインがなんと100円でした!」

 どのチェーンか、なんとなく察しがついた。入ったこともある。僕は悪い店とは思わないけれども、シノハラさんは初めてだったのだろう。

「その店でパスタを召し上がった?」

「はい。ひと皿ずつ。私はカルボナーラで、その人はナポリタンでした。ワインも1杯ずつ。サラダはオーダーしませんでした」

 1度目のお見合い後交際へ向けての継続を決めているわけだから、相手の男性の第一印象は悪くなかったのだろう。でも、ファミレスに連れて行かれたことでひどく傷つき、カウンセラーを通して断ったそうだ。

 その男がケチなのか、お金がないのか、あるいはシノハラさんをファミレスで十分だと値踏みをしたのか、そのあたりは不明だ。

 女性のシノハラさんは、軽く扱われたと感じて失望した。一方、男性側にとっては、お金がかかるめんどうな女だと思ったのかもしれない。価値観が異なり、かみ合わなかったのだ。これはどちらが悪いというものではないだろう。そのファミレスが好きな女性もいるし、男に奢ってもらうのはおかしいと考える女性もいる。

 相手との異なる価値観をどう乗り越えていくか。僕自身、婚活サイトで知り合った女性に「クソ老人!」とののしられていた経験もあり、婚活は人間力を試される場だと思った。

次ページ:僕は誰かをわくわくさせることができるのだろうか

前へ 1 2 3 次へ

[1/3ページ]