片寄に向けられた「よくこの状態で続けてきましたね」の言葉

片寄涼太(GENERATIONS from EXILE TRIBE)×作詞家・小竹正人 往復書簡 エンタメ 芸能 2020年10月18日掲載

  • ブックマーク

片寄涼太(GENERATIONS from EXILE TRIBE)×作詞家・小竹正人 往復書簡13

 東京に来て3年半ほどを過ごした“10代の僕”を振り返って、苦しくて何もかも上手くいかなかったと明かす片寄。新たに身体のケアを担当することになった先生との出会いについてエピソードを披露する。

 ***

拝啓 小竹正人さま

 民度。(笑)すごく良い表現だなあと思いつつ、笑ってしまいました。小竹さんの習い事の数にはもちろんのこと、それらに対してのエピソードの細かさにも大変驚かされました。この往復書簡が黒歴史の掘り起こしまで務めてしまうとは…。

 ピアノって大人になってから「やっておけばよかった~」という人が意外と多いイメージです。(音楽業界にいるからかもしれませんが。)僕の場合は、父が高校の現役音楽教師、父方の祖父も中学の音楽教師でした。ピアノが二台(グランドピアノとアップライトピアノ)当たり前に置いてあるような実家で育ったので、唯一自らの意思で始めていない習い事がピアノでした。

 母は専業主婦ですが、趣味でコーラス団に所属をしていたので、母が家で歌を練習しているのは至って日常の光景でした。洗濯物を干している母親の後ろにくっついて、1オクターブ上で音程バッチリの「硝子の少年/KinKi Kids」を歌っていたのが幼少期の僕でした。(笑)

 そういえば小竹さんには、ウチの母にもご挨拶して頂いたことがありましたね。小竹さんと共通の美容室に通っていた頃、大阪から来た母を一緒に連れて行った際にお会いして。僕がまだ10代だった頃だと思います。事務所に関する方にプライベートで母を会わせることがあまり無かったので、妙に恥ずかしかったのがとても懐かしい思い出です。

“10代の頃の僕”というと東京に来てからは約3年半ほどですが、正直いま振り返ってみると楽しかったと思えることはほとんどありません。苦しくて何もかも上手くいかなくて、ここに書くと暴露本的になってしまうほどの内容もあるくらいです。(笑)

 ですがその時間を後悔することはありません。その苦しみとか我慢とかが無ければ、きっといまの自分のメンタルと貪欲さは培われなかったと思うからです。

 先日、新たな身体のケアの先生に出会ったのですが、その方に『よくこの状態で続けてきましたね。普通の精神の方だったら多分投げ出してやめていると思います』と言われました。これだけ聞くとなかなかなことを言うなあと思うでしょう。ですが僕にとっては、そんなに驚くようなことではありませんでした。

『ああ、そうですか。』くらい。生きている間にはいろんな方に出会う。身心のケアをする人なんて、実力のある方から怪しげな方までごまんといるでしょう。そんな中でどんな方を望むかと問うなら、僕に厳しくしてくれる人、また僕の可能性を広げてくれる人。その意味で、感じたままを指摘した先生を信頼できると思ったのです。

 自分の意思に反する事柄やトラウマ的な出来事こそが世界を広げてくれたり、或いは、後になってから「やっておいてよかった」と思えることがあるのです。

 この往復書簡に黒歴史が掘り起こされたり、またこの往復書簡自体が黒歴史になったりしても、その全てを愛おしく思えることが、さらなるこれから先の幸せに導いてくれるのかなあと思います。

 ちょっと自分の話を書きすぎましたが、どうかお許しを、小竹先輩…。

片寄涼太

片寄涼太 Ryota Katayose
GENERATIONS from EXILE TRIBEのボーカル。1994年8月29日生まれ。大阪府八尾市出身。祖父と父が音楽教師で、若いころからピアノに親しむ。2012年にデビュー。14年にドラマ「GTO」で俳優デビュー。19年に映画「午前0時、キスしに来てよ」で橋本環奈とW主演。GENERATIONS「You & I」が配信中。11月18日にGENERATIONS 24枚目のシングル「Loading...」の発売が決定。

小竹正人 Masato Odake
作詞家。3月10日生まれ。新潟県出身。東京・本郷高校、カリフォルニア州立大学卒業。 作詞曲「Unfair World」で第57回日本レコード大賞受賞。「花火」(三代目J SOUL Brothers from EXILE TRIBE)など、数百曲を手掛けた。小説は『空に住む』『三角のオーロラ』(共に講談社)、歌詞&エッセイ集に『あの日、あの曲、あの人は』(幻冬舎文庫)。2017年から、自身の歌詞をモチーフに、三池崇史、行定勲、河瀬直美、石井裕也らが映像化する「CINEMA FIGHTERS project」のコンセプトプロデューサーを務める。