「女優のような美人」のはずが……。50代男性が結婚相談所で出会った女性の現実

石神賢介 57歳からの婚活リアルレポート ライフ 2020年8月1日掲載

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 もう一度結婚したい――57歳で結婚願望が高まったフリー記者、石神賢介氏。結婚相談所の紹介で、いよいよ女性とお見合いをすることになった。向かった先で出会ったのは、自分と同じ“婚活ジャングル”で戦う同志たちだった。

(文中の紹介文、登場人物はプライバシー保護の観点から一部を変更してあります)

週末のシティーホテルはお見合いのメッカ

 結婚相談所での婚活もスタートする。しかし、苦戦した。B社のホームページを介して何人もの女性にお見合いを申し込んだものの、次々と断られ続けた。

 1カ月で許されている上限いっぱいの20人にお見合いを申し込み、断られた数は19人。システムが故障しているのかと思うほどの惨状だ。

 40代の女性にとって、50代後半は初老に見えるというのが現実だろう。婚活サイトで出会ったマリナさんに「クソ老人」とののしられた体験がよみがえる。実際に自分が40歳のころ、50代後半は違う時代を生きている人たちだと思っていた。

 そんななか、ただ一人「OK」の返事をくれたのはミドリカワサキさん(仮名)という女性だった。金融関係で働く会社員だ。

 彼女との見合いは、週末の午後、渋谷の国道246号沿いにあるシティーホテルだった。高層階の、昼間はカフェとして利用されているバーラウンジだ。

 出かける前には、鏡の前で念入りに自分チェックをした。

「鼻毛は飛び出していないか?」

「歯の間に食べかすがつまっていないか?」

「爪は伸びていないか?」

 鏡に映る自分に声を出して問う。

 大丈夫。問題はない。

 服装は、襟付きの白いシャツに黒のジャケット、パンツはほどよく洗われたデニムにした。

 見合いにはスーツで臨むように、カウンセラーのコジマさんには指導されていた。お見合いはスーツで臨むのがマナーだという。しかし、週末にスーツはためらわれた。雑誌記者という仕事柄スーツを着なれていない。七五三に見える気がしたのだ。

 ジャケットがよれよれではないかも鏡の前で再チェックする。靴も念入りに磨いた。女性は男のジャケットやシャツだけでなく、靴、財布、ハンカチもチェックするらしい。

 さらに、自分の体のにおいをかいでみる。加齢臭が心配だったのだ。いまのところ誰かににおいを指摘されたことはない。しかし、臭くても、直接本人には言わないだろう。

 ラウンジのある40階に着きエレベーターの扉が開くと、天井まである窓から午後の光に包まれた。エレベーターの箱から出ると、今度は大勢の男女の視線を浴びた。ざっと20人はいる。

 休日なのにビジネススーツを着た男性、ワンピース姿の女性。最初はこの場でクラス会でもあるのかと思ったが、みんな見合いの待ち合わせだ。誰もが初対面の相手を緊張の面持ちで待っている。

 どの女性がサキさんか。視界を右から左へぐるりと見渡していると、後ろから声をかけられた。

「イシガミさん、ですよね?」

 ふり向くと、目の前に相談所のホームページで見た顔があった。身長は160センチほど。薄いピンクのワンピースで、清楚なイメージだ。

「はい。ミドリカワさんですか?」

「今日はよろしくお願いします」

「こちらこそよろしくお願いします」

 ラウンジのスタッフはよく心得ている。窓に面した明るいソファにアテンドしてくれた。

 いい席だ。テーブルの間隔が開いているので、周囲を気にせず会話ができる。僕はホットコーヒー、サキさんはアイスティーを頼んだ。

 ふと気づくと、店内のほとんどのテーブルが、ひと目見てお見合いとわかる男女で埋まっていた。週末の昼過ぎのこのホテルはやはりお見合いのメッカなのだ。世の中ではこれほどたくさんのお見合いが行われているのか……。知らなかった。

 サキさんとの会話は、おたがいに共通の話題を探り合った。しかし、どうしてもかみ合わない。この日が初対面。相手のことはプロフィールに書かれていることしかわからない。当然、共通の知り合いはいない。すると、自分の仕事、趣味、そのときに世の中で起きている出来事を話し、そこから枝葉を広げるしかない。

 初めてだったこともあり、1時間でぐったり疲労した。サキさんも疲れたと思う。おたがい笑顔で別れたけれど、案の定、カウンセラーを通してサキさんは交際に進む意思がないという連絡が届いた。僕もコジマさんに交際に進む意思がないことを伝えていたので傷つきはしなかったけれど、それまで体験したことのないむなしさを覚えた。

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