つげ義春の息子が語る「主人公が父自身だと思われると困ります」

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『ねじ式』で知られるつげ義春さんが、アングレーム国際漫画祭で特別栄誉賞を授賞したことは大きな話題となった。

 アングレーム美術館では、つげさんの原画展も開かれたが、その開催に尽力し、現地にも同行した息子のつげ正助さんに、つげ作品と今回の受賞について話を聞いた。

(今回のフランス行きと個展は)全然イメージ出来ていなかったものが実現して達成感はあります。個展会場には予想以上にお客さんもたくさん入っていましたし、評価してくださってるんだなと嬉しかったです。今まで展覧会自体日本でも一度もやったことないですから、いきなりフランスでやったというのも考えてみればすごいことだなと思うわけですけれど。

 父の作品については、やっぱりすごいと思います。普通のマンガじゃないですから。もちろんエンタテインメントは、それはそれでおもしろいですけど、父の作品は私小説的な文学性がありますよね。あとはやっぱりリアリズム。そこが違うところじゃないかと思います。

「無能の人」にしても、実際の父は河原で石なんて売っていないのに読者は本当だと思ってしまう。娯楽作品を読んで、作者が同じ行動をすると思う人はいないですよね。

 ただ、作品に描かれている人物が時としてフィクションではなく実在していると読者に思われることがあるのですが、主人公が父自身だと思われてしまうということは、家族としては困る。家族まで誤解されちゃいますから、子供としてはやっぱりいろいろ悩み、苦しみは生じます。息子ではあっても僕自身は父とは別人格ですし。「つげ義春の息子」という部分で、周りの人の先入観から良くも悪くも何かを期待されてしまうのもプレッシャーが大きいですし、生きづらい。

「それでも僕自身、父の生き方、考え方と近いところもあって」と語る正助さん。他にも、4月から刊行が始まる『つげ義春大全』全22巻(講談社)のために原稿をスキャンした際の裏話などを語っている。

 つげ正助さんの談話は、「芸術新潮」4月号(3月25日発売)の第2特集「つげ義春、フランスを行く」に掲載。つげ義春さんの受賞後初の独占インタビューも掲載される。

デイリー新潮編集部

2020年3月28日掲載

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