【イージス・アショアの不都合な真実(1)】異常な選定作業の知られざる内幕

政治週刊新潮 2019年7月18日号掲載

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他省庁からの出向者が…

 秋田県における地元説明会で見られた職員の居眠り。恐らくその職員も、説明会に向けた説明資料や想定問答の作成などに追われ、疲労が相当溜まっていたのだろう。とはいえ、今後数十年、時に地元住民の生活にも関わることになる施設について説明しに来た側としては、あまりにも本気度と誠実さを欠いた姿勢だった。

 だが、本気度や誠実さについて言えば、もっと問題にすべきことがある。それは「誰が政策立案を担ったのか」という点である。陸上イージスは、何千億円もの予算を投じる国家プロジェクトともいえる案件である。ましてや、場合によっては国民の生活に直接的に影響を与えうることから、特に地元への丁寧な対応が求められる。ある種の政治性をも帯びた、容易ならざる案件なのである。そうともなれば、防衛政策を担う官僚たちの中でも、特に優秀な人材が、その政策立案を担うべきだろう。

 ところが、ここでも不可解な事実が浮上する。実は、陸上イージスの導入に向けた実務を主に担ったのは、防衛省生え抜きの官僚ではなかった。他省庁からの出向者だったのである。ある関係者によれば、その出向者は、「(防衛省の)幹部と直接やり取りしていることを自慢げに語っていた」という。一方でこの人物は、防衛装備に関する知見が乏しいにもかかわらず、専門的知識を有する制服組(自衛官)らとの意思疎通が十分ではなかったようだ。イージス・システムに精通する制服組の一人は、「(その出向者から)システムに関して突っ込んだ相談を受けたことはない」と言い切る。つまり、防衛政策のプロでも、防衛装備のプロでもない者が、日本の防衛と、配備先の住民の生活に長年影響を与える政策決定に、強く関与したことになる。

 筆者は軍事アナリストであってジャーナリストではない。また、ここで指摘した者がどういう人物であるかは、18年春当時の官公庁の人事配置を確認すれば、誰の目にも明らかなことである。さらに言えば、多くの部署と人が関わる中、その道のプロではないにもかかわらず主たる実務を担わされた、当該中堅出向者だけに、全ての責任を押し付けるのも公平ではない。よって、仮に筆者がその者の名前を耳にしていたとしても、仮称を含め、個別に言及することはしない。

 ただ、防衛政策のプロではない他省庁からの出向者が主たる実務を担っていた、この事実だけは、陸上イージスを議論する際にはぜひ記憶に留めておいてほしい。なぜなら、この事実は、次回以降明らかにしていく「不可解な事実」を読み解く上で、一つの大きなヒントを与えてくれるからだ。

 次回は、いよいよ、陸上イージスを巡る問題の核心である「中身」(構成品)の問題に触れていく。

(2)へつづく

短期集中連載「『神の盾』に穴という『亡国のイージス・アショア』 地元を憤慨させた混乱の舞台裏」より

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