【イージス・アショアの不都合な真実(1)】異常な選定作業の知られざる内幕

政治週刊新潮 2019年7月18日号掲載

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1カ月弱の“スピード審査”

 それに比べ、100年以上後の今、日本を守っている防衛省の仕事ぶりはどうだろう。新幹線でわずか数時間の現地に十分足を運ぶこともなく、汎用ソフトを使い、机の上だけで調査と計算を済ませた結果、地元紙の記者が1週間で気付くレベルのミスを犯したのだ。

 筆者は、防衛省の職員や自衛隊の隊員が無能だとは全く思わない。ミスの原因は、要するに、数十カ所に上る候補地を一つ一つ実地で精査するお金と時間が、彼らに十分与えられていなかったということだろう。もちろん、先に述べた通り、現実に北朝鮮の弾道ミサイルなどの脅威がある中では、できる限り配備を急ぎたいという考えは当然だ。ただし、それにしても彼らの急ぎ方は尋常ではない。

 防衛省の資料によれば、陸上イージスは、配備後は30年ほど運用される見込みである。現時点で正確な年数は確定していないのであろうが、少なくとも、向こう数十年という長期間にわたって運用される巨大な“防衛装備品”であることは間違いない。

 陸上イージスは、護衛艦や戦闘機といった他の装備品とは性質が大きく異なる。国家や国民を守るという目的は同じでも、護衛艦や戦闘機は、第一義的には戦闘に参加する自衛隊員の命を守る。それに対し、陸上イージスは、直接的に国民の命を守るものなのである。しかも、2基で日本全土、つまり、1基で日本国民の半分を守ろうとする、極めて重要な防衛装備品である。

 当然、国民の生命と財産を預かる防衛省・自衛隊としても、相当程度、時間と労力をかけて情報を集め、どのような装備を取得すべきか議論・検討していかねばならないはずだ。

 ところが、ここで不可解な事実が浮かび上がってくる。なんと、防衛省は、陸上イージスの「中身」(構成品)を決める作業を、たった3カ月間で済ませたのである。防衛省は、2018年4月に選定作業を開始し、同年6月に完了。7月末に結果を公表している。つまり、向こう30年、国民の命を直接的に守る装備の「中身」を、たった3カ月間のスピード審査で決したのだ。

 さらに驚くべきことに、実質的な検討期間はさらに短く、実は1カ月弱しかなかった。というのも、防衛省が米国政府から、「中身」(構成品)に関する提案書を受領したのは6月。ある関係者によれば、その提案書は「関連資料も含めれば、1万ページを超える」という。もちろん、すべて英文で書かれている。

 提案書には、陸上イージスの“眼”となるレーダーと、“頭脳”となる戦闘システムのソフトウェアに関して、二つの選択肢が示されていた(いずれも米国製)。つまり防衛省は、事実上1カ月弱で、独特な法律的言い回しや難解な技術データを含んだ1万ページ超の英文資料を、限られた人員で読み込み、どちらの選択肢が最適かを検討したのである。想像するに、この間、関係する部署の職員たちは、働き方改革が進む世間とは全く異質な労働環境に置かれていたに違いない。

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