東野幸治が描く“矢野・兵藤、矢野伝説”「愛称『パイセン』は『オッパイ専門』の意味?」

芸能週刊新潮 2019年5月2・9日号掲載

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 東野幸治が仲間たちの秘話をつづる連載「この素晴らしき世界」。今週のタイトルは「おちょけ過ぎ芸人、矢野・兵藤、矢野(1)」。

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 吉本イチおちょけてる芸人は?と聞かれたら、矢野・兵動の矢野勝也君を挙げます。

「おちょけてる」の意味が分からない? 関西弁で「おちょける」とは、「ふざける」が一番近いと思います。

 我々芸人の仕事は、ただ単に「ふざけること」と思われがちですが、そうではありません。常に、真剣に面白いことをやろうとしてます(結果、面白いか面白くないかは別として)。

 矢野・兵動は関西を中心に活動する漫才コンビなので、関東の方には馴染みが薄いかもしれません。

 矢野君はみんなから「パイセン」というニックネームで呼ばれています。呼ばれているというか、実際は今から十数年前、会話中に矢野君自身の口から思いつきで出た言葉(つまりはギャグ)が、「パイセンやでぇ~」だったのです。

「先輩……の逆さ言葉で、なおかつ、『オッパイ専門』の意味にも取れる。その恥ずかしい響きと、キャッチーな面白さがある」

 と矢野君は説明してくれました。が、意味が分かりませんよね? 安心して下さい、私もです。

 キャッチーで面白いかは別として、いつしか、仲間や先輩・後輩は「パイセン」と呼ぶようになったそうです。ちなみにパイセンは私のことを「ガシ兄(にい)」と呼びます。そんな呼び方するのはパイセンだけです。独特です。

 ご覧になって頂くとすぐ分かるのですが、パイセンの喋り方や立ち振る舞いは、亡くなった横山やすし師匠にソックリです(もちろん本人もかなり意識していると思います)。

 一方、相方の兵動君はハンチング帽に黒縁の大きなメガネをかけて、全国ネットの人気トーク番組「人志松本のすべらない話」で面白い話をしては何度も爆笑をかっさらうようなタイプ。そして2人の同期はナインティナイン、宮川大輔君、星田英利君などがいます。みんな売れっ子です。

 相方の兵動君が「すべらない話」で頭角を現したので、「自分も何かしなくては!」と考えた矢野君。出した結論は……エンターテインメント集団「劇団YANOZAILE」を起ち上げることでした。

 YANOZAILE? 矢野ザイル? ヤノザイル? オカザイル? エグザイル? EXILE?

 劇団名をこんなふうにつけるなんて、やっぱりおちょけてるでしょう? 恥ずかしげもなくつけちゃうところが、矢野君らしいところなのですが。

 矢野君がレギュラー出演していた関西の朝の人気番組「ごきげんライフスタイル よ~いドン!」でも、パイセンの隠しようもないおちょけが炸裂します。

 スタジオでVTRを観ている時、隣のタレントがワイプに映っているとワイプに無理やりフレームインしてくるパイセン。ワイプの中でビックリするタレントとおちょけているパイセン。毎回、謎の時間が過ぎていきました。

 同じく「よ~いドン!」でのこと。真面目な情報をお届けするロケコーナーにパイセンは、必ずお気に入りの、胸に大きくガイコツが描かれている私服でやってきます。言うまでもなく、朝の情報番組に似つかわしくない服装です。

 ワイプの強引なフレームインと、ロケでのガイコツ服の結果、残念ながらパイセンは「よ~いドン!」のレギュラーから外されてしまいました。

 パイセンにとってはいつも通りのおちょけだったのですが、情報番組にはちょっと合わなかったようです。

(続く)

東野幸治(ひがしの・こうじ)
1967年生まれ。兵庫県出身。東西問わずテレビを中心に活躍中。著書に『泥の家族』『この間。』がある。