灼熱――評伝「藤原あき」の生涯(36)

国際Foresight 2019年3月24日掲載

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 ある日の夕方、義江はロンドンに着いた。

 ミラノでさよならした喜波貞子(きわていこ)への未練しかない。自分がテナーになりたくて勉強と仕事を求めて洋行してきたのに、成功している喜波から離れられないのは自分の才能に自信がないからなのかと自問自答する。

 そんな時、生まれたばかりの洋太郎が夭折したことを知った。自分も悲しかったが、文子が受けている悲しみを思うと前に進めないくらい落ち込んでくる。

 ロンドンにいる浅草時代の友人・松山の部屋はわずか6畳ほどの小さな1部屋なのに、部屋のほとんどをグランドピアノが独占している。...

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