ピエール瀧逮捕! そもそも「コカイン」と「ヘロイン」「覚醒剤」はどう違う?

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 ミュージシャンで俳優のピエール瀧がコカイン使用の容疑で逮捕された件は、各方面に大きな衝撃と影響を与えている。たしかに彼がメンバーである電気グルーヴが影響を受けたミュージシャンには、ドラッグと密接な関係のある者が多かったし、彼自身がアウトロー的な役柄を得意としていたのも事実。それにしても、まさか本当に……というのが大方の感想だろう。

 入手経路や動機についてはこれから捜査が進展するにつれて情報が伝わるだろうが、薬物と縁の無い真面目な一般人にとっては、そもそもコカインとはどういうものかがよくわからないのではないか。
 コカイン、ヘロイン、覚醒剤、LSD……全部まとめて「手を出してはいけないもの」というくらいの認識が一般的なところだろう。
 裏社会の取材に定評のある溝口敦氏は、著書『薬物とセックス』の中で、このあたりの違いについて、実際に麻薬取締に携わった人物に話を聞いている(以下、引用は同書より)。違法薬物は大別すると3種類にわけられるという。

「まず興奮作用を有するもの。次いで幻覚作用を持つもの。3番目に抑制作用を有するもの。
 だいたい脳に働くものはこの三つの機能を持っています。
 興奮作用の薬物としては覚醒剤、コカイン、MDMA、向精神薬のリタリンなど。押尾学が保護責任者遺棄致死罪で逮捕されたとき使っていたのがMDMAです。リタリンも一時期流行しました。使用者はリタラーと呼ばれていました。
 幻覚作用を持つものはLSD、マジックマッシュルーム(幻覚きのこ)、大麻、MDMAなど。MDMAは興奮作用と幻覚作用、両方を有しています。踊る方のクラブなどで乱用され、MDMAを摂取して踊る。
 麻薬の王と言われるヘロイン、あへん、向精神薬の睡眠薬などは抑制作用を有しています。危険ドラッグは指定薬物として法令で指定しているものだけでも2千種類以上あります。興奮・抑制・幻覚作用を全て網羅しています。危険ドラッグには麻薬や覚醒剤以上に危険なものもあり、ドラッグというより正体不明の猛毒と言った方が正解です」

 常習者になると、これらを単独ではなくブレンドする者も出てくるという。

「コカインとヘロインを混合して一緒に注射する『スピードボーリング』と呼ぶ利用法がある。コカインはアッパー系(興奮系)、ヘロインはダウナー系(抑制系)だから、まるで逆の作用を持つ薬物を同時に使う。なぜ二つの薬物を一緒に混ぜて使うのか。
 一つには両剤の作用を中和しようとする目論見がある。コカインの刺激をヘロインの鎮静的な作用で和らげる。あるいはコカイン使用後に起きる抑鬱状態を、作用時間の長いヘロインで緩和する。両剤を単独、かつストレートで使うより混合の方が安全だと信じている乱用者もかなりいるらしい。
 実際には両剤の併用は、ヘロインによる呼吸抑制がコカインによっていっそう強化される可能性があり、単独で使用するより、より危険性を高くするという」

 日本国内の薬物関連の報道では、コカインは覚醒剤よりも耳にする機会は少ない。そこには価格の問題もあるようだ。
 オーストラリアには、金持ちはコカイン、貧乏人は覚醒剤といったイメージがあるという。同様のイメージはアメリカにも存在しており、メキシコ麻薬戦争の内幕を描いた小説『ザ・カルテル』(ドン・ウィンズロウ)の中で、覚醒剤は「貧乏白人」のためのもの、という記述があるほどだ。コカインが「セレブのドラッグ」といわれるのは、こうした認識があるからだ。
 しかもコカインの乱用がひどい者は1日20グラム以上も消費するというから、1日あたりの費用は覚醒剤と比べるとケタ違いになってしまう。当然、「高級品」となるので、手を出せる人間も限られるというわけだ。
 また、日本においては覚醒剤というと「暴力団」「注射器」といったことを連想して「プアな感じ」と受け止め、「高級品」であるコカインを好むクスリ好きもいるのだという。ハリウッド映画などでは、成金のマフィアなどが鼻からコカインを吸うのがお馴染みのシーンとなっている。そうした姿に憧れる向きもいるだろう。
 しかしプアだろうが高級だろうが、手を出して良いものではないのは同じこと。
 ピエール瀧の数々の成功と名声が、この危険すぎる遊びを支えたのだとすると、何とも空しいことではないだろうか。

デイリー新潮編集部

2019年3月14日掲載

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