東野幸治が描く“平成ノブシコブシ吉村崇伝説“「脇鳴らし→BLコント→破天荒とキャラ変を繰り返しテレビに出続ける男」

芸能週刊新潮 2019年1月31日号掲載

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 東野幸治が仲間たちの秘話をつづる連載「この素晴らしき世界」。今週のタイトルは「破天荒風芸人、ノブコブ吉村(1)」。大穴狙いで買った馬券が大当たり。その驚きの配当金は……。

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 あまり人には知られたくないですが、平成ノブシコブシの吉村崇君が面白いと思うのです。特に、テレビに出演している時の吉村君が大好きです。なぜなんだろう? なぜ人にはあまり知られたくないのだろう?

 平成ノブシコブシというコンビの吉村君。相方は徳井健太君。同期の芸人はキングコング、ピース、南海キャンディーズ、NON STYLEなどで、豊作の世代です。

 元々はコブシトザンギというコンビ名でした。しかし画数を調べてもらったら凶ということがわかりました。急遽コンビ名を変更し、平成ノブシコブシに。幸先の良くないスタートでした。

 これが原因かわかりませんが、平成ノブシコブシはお笑いの賞レースで結果を残すことが一度もできませんでした。ネタで頑張ることを早々に諦めた吉村君。同期の優秀なお笑い芸人と戦う武器がない。そんなとき生み出したのが「脇鳴らし」でした。「幸せなら手をたたこう」のリズムに乗って脇の下を鳴らす。簡単な話、ただの余興芸ですね。

 しかし吉村君はすごかったんです。テレビに上半身裸で登場し2分ぐらい脇を鳴らす、というアホらしい妙技で爆笑をかっさらっていきました。一時、この脇鳴らしでテレビに出まくり、営業や学園祭にもたくさん呼ばれ、小銭を稼ぎました。でも当然のことながら、何度も何度も脇を鳴らすと次第に笑いは減り、飽きられていきました。そしてテレビへの露出も減っていきました。

 普通の芸人ならそのまま落ち込んでいくのですが、吉村君はギリギリのところで踏みとどまりました。「ピカルの定理」という人気番組に出演できたからです。そこでピースの綾部祐二君と演じたBLコント「ビバリとルイ」のキャラがブレイクします。その番組は他にも、渡辺直美ちゃんの学園ドラマコント「白鳥美麗物語」など人気コントキャラクターをたくさん生み出し3年間続きましたが、終了。

 今度こそ、仕事がなくなり落ち込むかなぁ~と思って見ていたら、予想もしなかった「破天荒キャラ」でブレイクしたのです。脇鳴らし→BLコント→破天荒キャラ。3度目の変身です。

 どんなキャラかって? 中身はとても単純です。吉村君は自分の給料以上の贅沢な品々を買うことで話題を作り、どんどんテレビに出ていったのです。ノブコブでもう一度ネタを作ってライブからまた頑張ろう!という気持ちは、清々しいほど全くありません。

「どれだけテレビに出たいんだ!」「そこまでしてテレビに出たいもんなのか!?」

 たとえば高級時計を買うドッキリ企画でも、番組を盛り上げるために期待以上に大きな買い物をします。自身の時計以外に、相方の徳井夫妻の分と芸人仲間の渡辺直美ちゃんの分も購入。合計金額は253万円でした。

 競馬の企画でも手堅い馬券を買うのではなく、常に大穴を狙います。結果、万馬券を的中させました。なんと、665万円を手に入れたのです。でもそこは破天荒ですから、それで満足せず、そこから100万円を投資に使ったといいます。競馬で得たあぶく銭をさらに増やそうと欲を出し、結果、水の泡になったそうですが。

 吉本の若手芸人の間に「給料以上の高い家賃の家に住めば仕事が増える」というジンクスがあります。吉村君ももちろん、それに従って、新宿の高級マンションに引っ越しました。オシャレな1LDKで、家賃はなんと50万円。破天荒ですねぇ~。(続く)

東野幸治(ひがしの・こうじ)
1967年生まれ。兵庫県出身。東西問わずテレビを中心に活躍中。著書に『泥の家族』『この間。』がある。