灼熱――評伝「藤原あき」の生涯(22)

国際Foresight 2018年12月16日掲載

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 梅田から乗った汽車が淀橋の鉄橋にかかると、すぐに義江はハーモニカの箱を手にとって開けてみた。

「かなしくなったらこれをふきなさい」とおかみさんの下手な字が書いてある。義江は以前から欲しかったハーモニカが手に入った事で、天にも昇る気持だった。しかも新しい着物を着て、大好きな汽車に乗っている。

 自分が乗って走っている汽車を見たい一心でカーブにかかる度に窓を開けて、半身をのり出して眺めた。

「危ないし、風が入るから閉めなさい」と、乗客の老人に叱られた。...

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