灼熱――評伝「藤原あき」の生涯(16)

国際Foresight 2018年11月4日掲載

  • 共有
  • ブックマーク

     52

 母のお菊は片手に風呂敷包み、もう片方の手に幼い義江の手をとり、下関の波止場に立った。白波立つ関門海峡の対岸には九州の門司が見える。

 門司まではわずかの距離だが、関門海峡を渡ることはお菊にとっては異国に足を踏み入れることと同じだ。

 なんのあてもないが、九州の方では折からの石炭景気に沸いているという。

「景気が良ければきっと座敷も忙しいはずや」

 関門連絡船が出発した。波のうねりが、時折激しく連絡船を揺さぶった。その度にお菊は隣に座る義江をぎゅっと抱き寄せる。...

記事全文を読む