安倍総理「消費税10%」表明の思惑 「医療費」という難題

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保険制度の限界

 消費税を8%に上げると正式に決めたのは2013年10月のこと。

〈上げないで 血圧、血糖、消費税〉

 という川柳が書かれた垂れ幕が、愛媛県のとある商店街に掲げられた。増税されたら血圧が上がるのが一般的な国民だろうが、逆に、増税されなきゃ血圧が上がる人たちがいる。

「もう、公的医療保険の限界が来ています」

 と医療関係者の一人は嘆く。

「再三の増税延期によって、財源確保が出来ず、全国の健康保険組合の約4割が赤字という状況です。全国で2位の加入者数を誇った人材派遣健保は、財政状況の悪化を理由に、今年度末で解散を決めています」

 主な原因の一つが、新薬の超高額な薬価だ。本庶佑(ほんじょたすく)氏がノーベル賞を受賞したことで再注目されている癌治療薬「オプジーボ」が代表的な例だという。

「今年11月に、3度目の値下げが実行されますが、それでも1人当たり年間1千万円もの費用が掛かります。しかし、高額療養費制度があるため、年収や年齢によっては患者の実質負担額はわずか1割となり、医療財政を大きく圧迫している」(同)

 効果的だが高額な新薬が開発されるたびに、財政圧迫に繋がってしまう保険制度の限界もあって、医療関係者の間では、増税を心待ちにする声が高まっているというわけだ。

 しかし、先の鈴木氏は警鐘を鳴らす。

「税と社会保障の一体改革とは、増税で得た財源の中で、社会保障の充実を図るということ。今の議論では、増税もするし、患者負担も増やすというものだから、伝え方次第では政権に大きな打撃になりますよ」

 荒波の中、出航した第4次安倍改造内閣。国民の理解を得られるかどうか。

週刊新潮 2018年10月25日号掲載

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