米大統領は日本人を「けだもの」と呼んだ あえて「原爆投下」を選んだトルーマンの人種差別

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原爆投下にはさまざまな選択肢があった

「とっくに白旗をあげてよかった状況だったのに、日本軍が抵抗しつづけたから、アメリカが開発した原爆を投下したのだ。戦争終結のためには仕方が無い。そもそも日本が間違った戦争をしかけたのが原因だ」
 日本人の多く、あるいは新聞やテレビに顕著に見られるこうした歴史観が、まったく事実に基づかないものであることは、前回の記事(原爆はアメリカ・イギリス・カナダの共同プロジェクトだった 教科書が絶対に教えない「原爆の真実」:https://www.dailyshincho.jp/article/2018/09200731/)でご指摘した通りだ。特に日本人が知らない重要なポイントとして、以下の4つを挙げたうえで、(1)、(2)について詳しくご説明した。

(1)原爆はアメリカの単独開発ではなく、イギリス、カナダとの共同開発である。
(2)原爆の投下はアメリカだけで決められるものではなく、イギリス、カナダも同意していた。
(3)原爆を大量殺戮兵器として使う必要はなかった。
(4)科学者たちは投下前から核拡散を憂慮して手を打とうとしたが、アメリカやイギリスの政治家たちがそれを無視した。

 2回目の今回も、『原爆 私たちは何も知らなかった』(有馬哲夫・著)をもとに、(3)、(4)について見ていこう(以下、引用はすべて同書より)。

 現代人、特に広島と長崎を経験した日本人にとって原爆は大量殺戮兵器そのものだ。しかし、実のところ原爆を開発し、使用しようとしていたアメリカには様々な選択肢があった。有馬氏は以下のように論点を整理している。

「『原爆を日本に使用すると決定した』イコール実際に広島や長崎に投下されたように、『女性も子供も沢山いる人口が密集した都市に無警告で使うことを決定した』のだと捉えられがちです。

 事実は、そうではありませんでした。日本に使用するといっても、大きく分けて三つの選択肢が存在しました。

(1)原爆を無人島、あるいは日本本土以外の島に落として威力をデモンストレーションする。
(2)原爆を軍事目標(軍港とか基地とか)に落として、大量破壊する。
(3)原爆を人口が密集した大都市に投下して市民を無差別に大量殺戮する。

 また、使用するにしても、二つの方法がありました。

(A)事前警告してから使用する。
(B)事前警告なしで使用する。

(1)の使い方ならば、絶大な威力を持ってはいるが、ただの爆弾だということになります。実際、ビキニ環礁などで実験した水爆がそうです。
(2)ならば大量破壊兵器になります。
(3)ならば大量殺戮兵器になります。しかも、戦争に勝つことより大量に殺戮することを優先しているので当時の国際法にも違反していますし、人道に対する大罪です。

 ただし、(3)と(A)の組み合わせならば、警告がきちんと受け止められて退避行動がとれるなら死傷者の数をかなり少なくできる可能性があり、大量破壊兵器として使ったとはいえても大量殺戮兵器として使ったとはいえなくなるかもしれません。国際法もぎりぎりクリアしていたといえるでしょう。

(3)と(B)の組み合わせならば、まごうかたなく無差別大量殺戮であり、しかも無差別大量殺戮の意図がより明確なので、それだけ罪が重くなるといえます」

 この選択肢、そして最悪の(3)(B)の問題点については、当時の意思決定に関係した暫定委員会のメンバーやアメリカのバーンズ国務長官、そしてトルーマン大統領も十分理解していた。さらに、「事前警告なしの使用には同意しない」と米海軍次官は文書で政府に伝えている。

「特に軍人は、(3)と(B)の組み合わせをできるだけ回避しようとしました。戦争といえども一線を越えていることは明らかなので、たとえ戦争に勝ったとしても、他の国の軍人たちから後ろ指を指されることになります。こんな不名誉なことをしなくとも彼らは圧倒的に優位に立っていて、日本の敗戦は時間の問題だったのです。自らの軍事的栄光を不名誉な行為で汚したくはないというのは当然でしょう」

 アメリカと共に原爆を開発し、投下に同意を与えたイギリスのチャーチル首相は(2)(A)の使用法を考えていたという。開発に関わった科学者たちも、決して大量殺戮を実行したかったわけではない。

 それではなぜ、結局、アメリカは、当時のトルーマン大統領は(3)(B)の形で原爆を使用することにしたのか。

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