家を買ったら神様がついてくる!? 出雲ならではの不動産広告

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 出雲といえば、旧暦10月を「神在月」というように、他の地方とは少し趣がことなる暮らしがある。出雲大社や、神話に彩られた有名な古社だけでなく、街角の小さい祠まで、神社ガールたちは神社巡りをしているのだが……。そうした出雲好き・神社好きも、不動産屋の物件広告にまで「神社」が登場しているとは知らないのではないか。

 出雲を中心に山陰の奥深い世界を旅したノンフィクションライターの野村進氏は、出雲市の不動産広告をくまなく見ていたとき、ある1行に出会って吃驚したと、新著『どこにでも神様 知られざる出雲世界をあるく』で語っている。

「売家350万円」と掲示された広告の備考欄に、「荒神様(こうじん)有り・隣地に水神様とお稲荷様有り」と書かれているというのだ。

「思わず『ほぉーっ』とため息が洩(も)れた」という野村氏。これまですべての都道府県に足を運んできたが、島根県の出雲地方以外で、こんな不動産広告を見たことがないそうだ。実際、地元出身のある青年によると、「うちにも荒神さん(台所の神様)がありますよ」という。スマホで撮影してくれた写真を野村氏が見ると、確かに、龍蛇(りゅうじゃ)の形に縄を結いあげた「荒神さん」が2体並んで、庭先にとぐろを巻いている。年末になると、父親と2人で縄を何重にもなうのだそうだ。

 別の出雲出身の女性の実家は、屋根の四隅の瓦(かわら)に「大黒(だいこく)様」が描かれている。

「『あれが出雲大社の神様だよ。悪いことをすると、ちゃんと見てるんだよ』と、幼いころから言われて育ってきた」というその女性は、「いまでも屋根を見上げ、頭巾(ずきん)をかぶった、ふくよかな大黒様の笑顔を目にするたびに、祖父母や両親の言葉を思い出す」という。

 野村氏は同書のなかで、出雲地方について「現代の世界ではまれに見る、人々と神々との近しさ」と指摘している。現代生活では薄れてしまった、「神様と暮らす生き方」が、出雲ならではの魅力となり、東京などの大都市圏で暮らす女性たちを惹きつけているのかもしれない。

デイリー新潮編集部

2018年8月20日掲載

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