夫婦喧嘩を避けるためにお父さんが知っておいたほうがいいPTA事情

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非効率的な雑用

 共働きが増えたとはいえ、世帯の収入を主に男性側が担っている家庭は少なくない。そしておそらくそういう場合、子供の教育、特に学校関係のことなどは女性側に任せてしまいがちだ。また、たとえイーブンの関係でも何となく「子育てはお母さんが主役」という考えは依然根強い。

 結果として、PTAの仕事を担うのは母親になりがちだ。

 ここで夫の側が注意しておかなければならないのは、PTAがことのほか妻に負担をかけている可能性がある、という点だ。

「ときどき学校に集まって、何か雑用やっているだけだろ」

 こんな認識のまま、不用意なことを言ったら、家庭が大変な修羅場になりかねない。PTAで妻が理不尽な目に遭っていた場合、「何もわかっていない」と逆鱗に触れることは必至だろう。

 たとえばどんな理不尽があるか。『PTA不要論』(黒川祥子・著)には、具体例が豊富に紹介されている。同書からいくつか抜粋してみると……。

・平日の昼間に集められ、回収したベルマークの点数計算と集計。1点1円を延々と切り貼りし、人数×労働時間を考えると、パートの時給どころか最低賃金をはるかに下回る。

・広報紙製作のため、平日昼間に研修を受けさせられる。ただしほとんど内容はなし。教育委員会主催のコンペでの受賞を目指せと言われる(が、受賞したとてメリットはない)。

・「情報流出の恐れ」から、名簿づくりは学校以外での作業は禁止。デジタル化はされておらず、チェックはすべて目視。

 費用対効果がまったく考慮されない世界なのだ。

 こうした非効率的な慣行が放置されているのは、代表的な会員像を「時間がありあまっている専業主婦」と設定しているからかもしれない。実際にはフルタイムでは働いていなくても、何らかの形で働いている母親が多いし、専業主婦とて暇ではない。しかし、時計の針が止まったかのような「母親像」が前提になっているのだ。

会長は男

 そのような旧態依然とした考え方ゆえか、PTAの実働部隊の多くが女性なのに対して、会長だけは男性というケースが多い。

 日中自由に動けて、なおかつ地元でネットワークがあって……こんな条件で絞っていくと、地元の自営業者や経済的にも時間的にも余裕のある男性、ということになってしまうという面はある。

 そして地元の顔役的な人が会長になってくれて、トラブルを引き受けてくれるのならば、問題はない。

 しかし、そういう人がまたさらにややこしいことを言うことが、一般の会員にとっては頭痛のタネなのである。(以下、引用は『PTA不要論』より)

 たとえば都心部に住む母親の話。

「都心といってもオフィス街ではなく、古くからの商店街がある地域なので、PTAのOGのような、地区の『母の会』みたいな組織があるんです。ここが、いろいろ言ってきますし、PTA会長だって頭が上がらないんです。地元で育った会長だと、自分が子どもの頃のPTA会長とかが、地域ボスとして地元にいますから言いなりです。PTAって、地元と密接につながっているんです。そこが納得しないと、何も通らないような組織なんです」

 別の都民もこうこぼす。

「うちも古くからの商店街にある学校なので、歴代の役員の方々が皆、近所にお住まいなんです。前前会長、もっと前の会長とかお歴々が『顧問』として君臨しているんです。その方々に、なんでもお伺いを立てないとダメなんです。役員決めもそうです。そういうお歴々に打診しないと……」

 不条理なまでの非効率的な慣行、OGやOB、ベテランたちの余計な介入……いずれも会社で働いている男性にとってもお馴染みの問題のはず。

「PTA活動なんて大したことないでしょ」という認識を改めて、「俺と同じ苦労を抱えている」と思って、面倒くさがらずに妻の話を聞いてみてはどうだろうか。

デイリー新潮編集部

2018年6月4日掲載

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