1日20食限定! 全国の駅弁ファンが恋い焦がれる「すごい駅弁」

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 高い……でも食べたい。高い、でもやっぱり食べたい……なんて躊躇していたら確実に売り切れてしまうのが、岩手県は三陸鉄道北リアス線の久慈駅構内で販売されている「三陸リアス亭のうに弁当」だ。

 最近は、大きめの駅弁コーナーなら、探せばどこの駅にも「ウニ弁当」を見かけるが、こちらのウニ弁当は、そんじょそこらのウニ弁当とはひと味もふた味も違う!

「おいしいもの」のためならば万難を排し地の果てまでもゆく情熱に溢れた食エッセイの名手、平松洋子さんは、このお弁当を味わう幸せを『日本のすごい味 おいしさは進化する』のなかでこう綴っている。

「薄いブルーの掛け紙を取ってふたを開けると、ぎっしり整列するウニ。一両編成の列車が動き出すと、待ちきれなかった。ごはんといっしょに箸ですくうと、口のなかがウニのうまみ、潮の香りで一杯になる。ウニの汁で炊き上げたごはんが口中でほわっとほどけ、これはやっぱり特別な味だなあ!」

 このウニ弁当、NHK朝の連続テレビ小説「あまちゃん」に登場するウニ丼のモデルとなった至極の一品。77歳の工藤清雄さん、75歳のクニエさんご夫婦が二十数年かけて作り上げてきた味だ。2011年3月11日に発生した東日本大震災で三陸鉄道が津波の被害を受けたときには「線路を失ってしまっては商売も続けられない」と打ちひしがれたそうだが、全国から続々と届く励ましの電話や手紙に励まされ、震災の1カ月後には営業を再開した。

 大きさや形に合わせて蒸し具合を調整したウニが際立つよう、ごはんをふわっと盛りつけるのはご主人の清雄さんの独自の技。絶妙な口溶けを誇るウニ同様、誰にもマネできないと定評がある。いまも夫婦二人で5時から仕込みを始める毎日を送っているが、クニエさんは、「震災のとき、遠方から長年のお弁当のお客さまから『おかあちゃん、生きていたか』という手紙や電話が相次いだの。ありがたくて、辞めたくても“辞めます”とは言いかねました。以来がんばって続けてきましたが……そろそろ限界かもしれません」と話す。

 それでも今日も清雄さん、クニエさんは朝5時から仕込みを始める。

 列車に揺られながら美しい紅葉を眺めつつ、売り切れ必至の絶品をほおばるためだけでも旅をする価値がある。この「うに弁当」は毎年10月末までの販売のため、今年も販売期間はあとわずか。ぜひ東北に行くなら三陸鉄道北リアス線の久慈駅を訪れて欲しい。

デイリー新潮編集部

2017年10月25日掲載

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