「いなくなってほしい」我が子に手をかけた母親が抱えていた深刻な「産後うつ」

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 読売新聞で連載中の「孤絶 家庭内事件」。7月17日に掲載された第3部「幼い犠牲」(2)では「産後うつ」が引き起こした殺人事件について焦点が当てられた。

「いなくなってほしい」そんな書き出しで始まった記事には、2歳の愛娘に手をかけたときの母親の気持ちが克明に記されている。

 《「首に手を持っていこうか」「でも、かわいそう」。20分ほど細い首を見つめた末、ついに両手を首に伸ばした。出産後、ずっと聞き続けてきた泣き声が消えた》

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 可愛い我が子に対し、「いなくなってほしい」なんて思う母親がいるのか、そう思う方もいるだろう。しかし、厚生労働省の2015年度の調査で、出産前後の妊産婦の4%にあたる約4万人が精神的な不安定さを抱えているとの推計が出ているように、赤ちゃんを可愛いと思えない、眠れない、誰とも話したくない……望んで妊娠・出産したにもかかわらず、育児中にどうしようもない不安や孤独に襲われ、ノイローゼ気味になってしまう「産後うつ」に悩まされる母親は少なくない。虐待や離婚、中には自殺に至るケースも報告されている。

 のんびり屋でマイペースを自認していた宝塚オタクのギャグ漫画家はるな檸檬さんも、2014年に第一子を出産した際、体験したことのないような孤独感に襲われたという。そのときの心境を、漫画『れもん、うむもん!―そして、ママになる―』で描いている。

 望んで出産したはずなのに、他のお母さんは幸せそうなのに、なぜ私は我が子を可愛いと思えないのか……。そのような不安や孤独は、母親のせいではない。自身の力だけではコントロールのできない病なのだ。

 冒頭で紹介した母親も、典型的な「産後うつ」だったという。公判でも彼女の精神衰弱が認められ、今年4月執行猶予付きの有罪判決が言い渡された。しかし失った命は戻ってこない。もし彼女が、早く適切な治療を受けていれば、あのような悲しい出来事は起こらなかったかもしれない。

デイリー新潮編集部

2017年7月26日掲載

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