失言をしたとき政治家はどう動くべきか 石破茂氏の教訓

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■自衛隊もよろしく

 稲田朋美防衛大臣が都議選に関連して、「自衛隊」を持ち出した失言が、厳しい批判にさらされている。稲田大臣の「失言」「問題発言」は今に始まったことではないのだが、ただでさえ疑惑やスキャンダルが続いている安倍政権にとっては、また一つ頭痛のタネが増えたというところだろう。

 稲田大臣に限らず、このところ閣僚の言動が問題視されるケースは少なくない。官邸や支持者からすれば、「メディアに悪意がある」ということになるのかもしれないが、悪意あるメディアに隙を見せてしまっているのもまた事実だろう。

 第2次安倍政権発足直後には、こうした騒動はそう多くなかったし、発生後の危機管理も現在よりもスマートだったように見える。

 その頃、幹事長をつとめていたのが、最近では「党内野党」の筆頭とも言われる石破茂氏である。その口調を丁寧と見るか、ねちっこいと見るべきかは人によって異なるだろうが、石破氏の説明能力の高さは定評のあるところだろう。それだけに、このところの閣僚の答弁や政府の説明に、石破氏は度々苦言を呈している。

 発言が問題視されたとき、どのように動くべきなのか。石破氏が野党時代に著した著書『国難』に興味深いエピソードが紹介されている(以下、同書より引用・抜粋)。

 あるとき、石破氏は自衛隊についてのたとえ話で、ある障害の名前を不用意に出してしまったことで、各方面から猛抗議を受けることになってしまった。

 このとき、不用意な発言について、石破氏はすぐに謝罪しただけではなく、行動に移った。

『国難』
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「調べられる限りの関係団体に謝罪と反省の手紙をお送りしました。

 寛容にも団体の方々からはすぐにお返事をいただくことができ、

『これを機に石破さんも私たちの状況を理解する政治家になってください』

 というお言葉をいただき、さらには私の誕生日にバースデーケーキまで持ってきていただいて、ほんとうにありがたかったことを覚えています」

 口先だけの「謝罪」「撤回」ではなく、誠意をもった手紙を送ったからこそ、関係者も矛をおさめ、結果としては友好的な関係を築くことができたということである。

 政治家は言葉の職業だが、それだけに言葉は諸刃の剣となるし、自ら批判の種を提供すべきではない、と石破氏は説いている。

■いい加減な大臣

 なお、同書には「大臣」という職業についても興味深い記述がある。

「いい加減な大臣が出てくるのは、結局のところ、大臣を何かの名誉職と勘違いしている人がいるからでしょう。『俺ももうベテランだから、大臣になってもいいはず』とか『同期のあいつが大臣になったのなら俺も』という類の発想です。

 しかし、大臣というのは、それになるのが目的なのではなく、自らの信じる政策を成し遂げるための手段であるはずです。少なくとも私自身は、そう考えてやってきました」

 この文章の前にあるのは、民主党政権時代の大臣の名前であった。残念なことに、今でもそのまま通用する記述だと感じる向きも多いのではないか。

デイリー新潮編集部

2017年7月4日掲載

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