自動運転機能で追突事故…メーカーの責任は?

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「おはよう、マイケル」と聞けば、80年代に一世を風靡した海外ドラマ「ナイトライダー」を思い浮かべる向きも少なくなかろう。だが、“ナイト2000”のような夢の自動車の誕生が現実味を帯びてきたことで、新たな疑問が浮上する。自動運転で追突事故を起こしたら誰の責任になるのか?

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海外の“自動運転モード”では死亡事故も(※イメージ)

 事実、自動運転機能はもはやフィクションではなく、日常的な存在になりつつある。国交省自動車局の担当者によれば、

「2014年に生産された新車は約438万台ですが、そのうち自動ブレーキを搭載しているのは41%、およそ180万台に上ります」

 車間距離を一定に保つACC機能も高級車を中心に普及が進み、約12万台に備わっているという。

 しかし、いかに自動運転といえども、100%の安全が自動的に保証されるわけではない。警察庁は先頃、昨年12月以降の約半年間に、自動運転機能に起因する2件の事故が起きていたことを明らかにした。

 昨年12月に高速道路で発生した事故では、ACCを備えた車が渋滞で先行車に追突。カーテレビを横目に観ながら走行していた運転手は、警告音を聞いて急ブレーキを掛けたが間に合わなかった。

 今年6月には、一般道でも“自動ブレーキで停まると思っていた”運転手がブレーキを踏まずに追突事故を起こしている。

 一般道と違って歩行者や信号がない高速道路は自動運転に向いていて、渋滞緩和にも役立つとされてきた。そんな夢の自動車が事故を起こし、渋滞を引き起こしては本末転倒だろう。だが、

「現在の自動運転機能は、あくまで“運転を支援する補助装置”。人間がハンドルから手を放して運転できる代物ではありません」

 とはモータージャーナリストの島下泰久氏である。

■過信が原因

「確かに、ACCは高速道路での長距離移動に適しています。アクセルを踏み続けなくても、一定の速度で走り続け、前方に車があれば車間距離を調整してくれる。ただ、カメラセンサーを用いるACCの場合、逆光や霧のなかでは不具合が生じたり、道路の白線が掠れていると車線を認識できないこともあるのです」(同)

 そもそも、自動運転システムは4つの段階に分かれており、レベル4は運転手を必要としない“完全自動運転”を指す。とはいえ、緊急時に運転手の操作が求められるレベル3までは、

「損害賠償責任はドライバーにあると考えています。現在、日本国内を走行する車はレベル2止まりなので、事故の責任は免れません」(日本損害保険協会)

 自動ブレーキも基本的には緊急用に過ぎないため、現状では事故を起こしても運転手が自動運転を“過信”したことが原因とされてしまうのだ。では、メーカーの責任は問えないのか。

 日大危機管理学部の福田弥夫(やすお)学部長(保険法)は、

「ACCや自動ブレーキが作動しなかったせいで事故が起きた場合、メーカーを製造物責任法や共同不法行為者として訴えることは可能かもしれません。ただ、レベル3までは現行法に基づく損害賠償責任が適用されるため、運転手に全く過失がないと立証しない限り、裁判で争うのは難しい。タカタのエアバッグといったリコール対象になるような欠陥でもなければメーカーの責任は問いづらい」

 夢の自動車に乗れる日までは、人間が現実の責任を背負うしかない。

「ワイド特集 真夏の夜の夢」より

週刊新潮 2016年7月21日参院選増大号掲載

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