宇多田ヒカル、椎名林檎、aiko、浜崎あゆみ 4人がデビューした1998年の奇跡

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 これまでのところ、日本で最もCDが売れていた年は1998年。この年、日本におけるCD総生産枚数は4億5717万3000枚、総売り上げは5878億7800万円である。

 同年のアメリカのCDの売り上げ枚数は8億4610万枚と上回るものの、人口を考えると、1998年の日本人は「人類史上最もCDを買っていた国民」と言ってもよい。おそらく、この数字が更新されることはないだろう。

 さて、それとは別の意味でも「1998年」は特別な年である――そう述べているのは、このたび『1998年の宇多田ヒカル』を上梓した音楽ライターの宇野維正氏だ。

 その理由は、宇多田ヒカル、椎名林檎、aiko、浜崎あゆみという今もトップで活躍する女性歌手がデビューしたのもまたこの年だからである。

「はじめに」で宇野氏は、執筆動機を次のように綴っている。

「この4人について、『名前も知らない』という日本人はほとんどいないでしょう。

 にもかかわらず――。

 4人の中で、最も日本の芸能界・歌謡界から遠い場所にいるように見られがちな椎名林檎が、2014年以降は唯一のNHK紅白歌合戦の出演者であることについてはあまり語られていません。

 4人の中で、90年代末に『現象』のようなものを巻き起こすことがなかった唯一の存在であるaikoが、実は近年の作品において最も高いCDセールスを継続的に記録していることについてはあまり語られていません。

 4人の中で、『ミュージシャン』というよりも『芸能人』というイメージが最も強い浜崎あゆみが、2015年、実は最も多くのオーディエンスを前にして精力的にステージに立ち続けていたことについてはあまり語られていません。

 そして、デビュー・アルバム『First Love』が国内外で約1000万枚という空前のセールスを記録し、日本の音楽シーンにおいてあらゆる意味で『特別な存在』であった宇多田ヒカルについて、まだ誰もその歴史的な意義を明らかにしていません。本書を執筆している時点で、宇多田ヒカルは5年以上活動を休止しています。彼女の偉大な足跡を検証する時間はいくらでもあったはずなのに、と思わずにはいられません」

 本書で興味深いのは、単に4人の軌跡を追うだけではなく、それぞれの相関関係を描いているところだ。

 たとえば、宇多田ヒカルと椎名林檎が、デビューして間もない1999年に1度だけ「東芝EMIガールズ」というユニット名でステージに上がっていたことや、椎名林檎とaikoはアマチュア時代に同じコンテストで競っていたこと、等々。

 4人の人生が有機的に絡み合い、刺激し合ってきたことが見えてくる。

 彼女たちは何を表現しようとしてきたのか。1998年にそれはなぜ起こったのか。

 音楽誌の編集者として、あるいはジャーナリストとして20年以上音楽業界に携わってきた、宇野氏がその経験を活かし、同書では豊富な事例と丹念な分析で、1998年という「特別な年」について迫っている。

デイリー新潮編集部

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