百田尚樹氏「九条信者を前線に送り出せ」 “放言”の真意は

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 安保法案を巡って、反対運動が盛り上がり、国会前でも大規模なデモが行われるようになったのはご存じの通りである。ここに参加した多くの人々が日本国憲法9条を誇りに思い、その大切さを訴えているのは間違いないだろう。

 そんな参加者たちが聞いたら目をむいて怒りそうな発言がある。

「九条信者を前線に送り出せ」

 2013年にそうツイッターで発信したのは、作家の百田尚樹氏である。

 この発言は、当時、多くの新聞で取り上げられ、百田氏は強い批判を浴びた。しかし、百田氏によれば、批判は「曲解の極み」だったという。

 真意はどこにあったのか。

 百田氏は新刊『大放言』で、当時の経緯を述べている。以下、同書から引用しよう。

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「九条信者を前線に送り出せ」発言

 これは私のツイッターでの発言だ(2013年10月7日)。

 この発言も「しんぶん赤旗」はじめ多くの新聞でさんざん取り上げられて叩かれた。批判の内容はどこも似たようなもので、「百田尚樹は戦争が起これば、憲法九条を信奉している平和主義者を前線に送り込んで殺してしまえと言っているとんでもない奴だ」というものだ。

 これまた恐ろしいまでの曲解である。私のツイートの原文はこうだ。

「すごくいいことを思いついた! もし他国が日本に攻めてきたら、9条教の信者を前線に送り出す。そして他国の軍隊の前に立ち、『こっちには9条があるぞ! 立ち去れ』と叫んでもらう。もし、9条の威力が本物なら、そこで戦争は終わる。世界は奇跡を目の当たりにして、人類の歴史は変わる」

 賢明な読者ならおわかりのように、これは皮肉である。

 憲法九条を何が何でも守りぬくと主張している人たちは、「九条があったからこそ、日本の平和が何十年も守られた」と言う。彼らに言わせれば、日本が戦争から免れたのは九条のおかげらしい。

 もし彼らが主張するように、あるいは信じるように、本当に九条の威力によって日本が守られていたとするなら、実際に戦争が起こったときに、彼らに頑張って戦争を食い止めてもらおうではないかという皮肉である。戦争が起これば、九条信奉者を前線で殺してしまえという意図はどこにもない。

 そして実はこのツイートはある一連のツイートの流れで書いたものだ。つまり「9条教の信者を前線に送り出す」というツイートは、複数の発言の後半部分なのである。

 前半の三つのツイートは以下の通りである。

「かつて清朝末期、義和団の信徒たちが支那全土で暴れまわった事件があった。義和拳教を信ずれば鉄砲の弾にも当たらないと信じて、前時代的な武器で列強の近代軍隊と戦った。これ何かに似ているなと思ったら、憲法9条とそっくりだ。憲法9条さえ唱えていれば、外国の軍隊などに攻められることはない!」

「憲法9条死守の護憲派が考えを改めるのは、日本が他国に攻められて多くの同胞を殺されたときかもしれない。しかし、それでは遅い!」

「9条を守れと主張する人は、『私たちの息子を戦場に送り込んでいいのか!』と言う。『私たちの娘が他国の軍人たちに強姦されていいのか!』という発想もしてもらいたいな」

 これが一連のツイートである。ツイッターは基本的に百四十字という字数制限があるので、それを超える場合は分けて書くことになる。つまり三つのツイートは長い一文なのである。そして、このあとに問題の「9条教の信者云々」のツイートが続く。

 つまりツイートを続けて読めば、かつての義和団の信奉者と憲法九条信奉者の類似性を書いた上での皮肉だというのは容易にわかる。

 それにしても、私が憲法改正を口にすると、護憲派や平和主義者を標榜する人たちから凄まじい罵倒と非難の言葉が投げかけられる。人格否定や人権無視の言葉はましなほうで、中には「死ね」と平気で書いてくる人もいる。ちなみに安倍総理に対しても同様の言葉を浴びせる九条信奉者は珍しくない。

 私の経験上、日本の平和主義者くらい好戦的で攻撃的な人たちもいない。彼らは「平和」のためなら「人殺し」も「戦争」もやむを得ないと考えているように思える。

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 数々の「問題発言」「炎上発言」で知られる百田氏だが、『大放言』では、「我が炎上史」として一章を割き、その経緯や裏話を赤裸々に綴っている。

デイリー新潮編集部

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